犬種紹介
著者:吉村貴幸
公開日:2025/10/01/更新日:2025/10/01
日本犬の種類は6犬種!和犬の特徴や飼う時のポイントを解説

日本犬(和犬)は、古来より日本の人々と暮らしてきた特別な存在です。忠実で勇敢、そして独立心の強い気質を持ちながらも、心を許した飼い主には深い愛情を示すのが最大の魅力です。
本記事では、日本犬の歴史的背景や特徴、代表的な6犬種の紹介に加え、日本犬と暮らすうえでのメリット・デメリット、さらに長く健康に暮らすためのポイントを詳しく解説します。日本犬に興味を持っている方はもちろん、これから飼いたいと考えている方にとって役立つ情報をまとめました。
日本犬(和犬)とは?その歴史と特徴

日本犬は日本独自の気候や生活様式の中で発展してきた犬種で、その姿や性格には日本文化が色濃く反映されています。まずはその定義と歴史を押さえておきましょう。
日本犬の定義
「日本犬(和犬)」とは、日本に古くから生息してきた純血のワンちゃんを指します。現在、日本犬保存会などが中心となり血統を守っています。代表的な6犬種は以下の通りです。
いずれも自然環境に適応して進化してきたため、他国の犬とは異なる体格や気質を持っています。特に警戒心や自立心が強いのは、日本という島国で人とともに生活し、外敵や環境に適応してきた歴史の証と言えるでしょう。
日本犬が天然記念物に指定された歴史的背景
大正から昭和にかけて、西洋犬の流入により交雑が進み、日本犬本来の姿が失われつつありました。
「このままでは純血の日本犬が絶滅してしまう」
そう危機感を抱いた学者や愛犬家たちの努力によって、一部の犬種は1930年代に国の天然記念物に指定されました。秋田犬が特に有名ですが、柴犬や北海道犬も同様に守られてきました。
天然記念物指定は「飼育の義務化」ではなく「文化財として守る」という意味合いです。そのため、血統管理や繁殖に関しては犬保存会が中心的な役割を担い、今も純血維持のための活動が続けられています。
今でも飼える!代表的な日本犬の種類一覧
現在でも家庭で一緒に暮らせる日本犬は6犬種。それぞれの犬種には独自の魅力と飼育上のポイントがあります。ここでは性格や見た目だけでなく、「どんな人に向いているか」「どのような暮らしが合うか」といった視点も交えて紹介します。
柴犬

日本犬の中で最もポピュラーな小型犬。体高は35〜40cm前後と小柄で、都会のマンション暮らしにも比較的適応しやすいのが特徴です。
柴犬は忠実で従順ながら、自立心も強いため、ベタベタした甘え方はあまりしません。しかし、飼い主に対しては揺るぎない信頼を寄せ、家族の一員として強い絆を築けます。
一方で、見知らぬ人や犬に対して警戒心を示すことも多いため、子犬の頃からの社会化トレーニングが非常に大切です。海外でも「Shiba Inu」として大ブームとなり、その凛とした表情や愛らしいしぐさに魅了される人は後を絶ちません。
北海道犬

体高45〜50cm前後の中型犬で、筋肉質でがっしりとした体つきをしています。厚い二重被毛に覆われ、寒さに極めて強いのが特徴です。かつてはアイヌ民族の猟犬として、ヒグマやエゾシカを相手にするほど勇敢な存在でした。
性格は忍耐強く落ち着きがありながら、強い警戒心と勇敢さを併せ持っています。飼い主に対しては従順で甘える姿を見せることもあり、そのギャップが愛おしいと感じる飼い主も多いです。
ただし、力が強く運動量も多いため、十分な散歩や広い運動スペースが欠かせません。アウトドアが好きでアクティブな家庭に特に向いている犬種です。
甲斐犬

中型犬で、虎毛(黒地に茶色や灰色の縞模様)が美しい独特の被毛を持ちます。「飼い主一筋」と呼ばれるように、非常に強い忠誠心を示すのが最大の特徴です。
警戒心が強いため、初対面の人や他の犬と打ち解けるのに時間がかかりますが、その分飼い主に対する愛情は深く、信頼関係を築くと強い絆を感じられます。
また、俊敏で機敏な動きを得意とし、番犬としても非常に優秀。飼い主との密接な関係を好むため、べったり一緒に過ごしたい人に特におすすめです。反面、留守番が多い家庭にはあまり向いていません。
紀州犬

和歌山県を中心に発展した中型犬で、真っ白な被毛が印象的です。冷静沈着で賢く、古くはイノシシ猟やシカ猟で活躍してきました。そのため、力強さと集中力を併せ持っています。
性格は頑固な一面がありますが、しっかり主従関係を築けば非常に従順で頼もしい存在になります。学習能力が高いため、一貫性のあるしつけをすれば素晴らしい家庭犬になります。
運動量が多く、気質もやや気難しいため、初心者よりも経験のある飼い主におすすめです。広い庭や自然に近い環境でのびのび暮らせると理想的です。
四国犬

四国山地で猟犬として発展した中型犬で、野生的な風貌と精悍な顔つきが魅力です。性格は勇敢で警戒心が強く、外では堂々としていますが、飼い主に対してはとても愛情深く忠実です。
特に特徴的なのは、俊敏で粘り強い狩猟能力。そのため、日常的にも活発な運動を必要とします。運動不足になるとストレスを溜めやすいので注意が必要です。
「孤高の和犬」とも呼ばれるように、自立心が強いため、しっかり信頼関係を築ける飼い主でなければ扱いは難しいですが、その分、通じ合えたときの喜びは格別です。
秋田犬

日本犬最大の大型犬で、体高は60〜70cm前後に達します。映画『ハチ公物語』で有名になったように、飼い主への揺るぎない忠誠心を持つ犬種です。
性格は穏やかで落ち着いていますが、いざという時には勇敢に家族を守ろうとします。体格が大きく力も強いため、しっかりしたしつけと運動管理が必要です。
大型犬ゆえに十分なスペースや運動環境を確保できる家庭に向いていますが、その堂々とした姿と心の絆は、かけがえのない存在感を放ちます。海外でも「Akita」として知られ、人気を集めています。
日本犬を飼うメリット

日本犬は、他の犬種にはない独自の魅力を持っています。特に「忠実さ」「勇敢さ」「身体の丈夫さ」は、飼い主にとって大きな安心感と喜びをもたらしてくれます。
飼い主への高い忠誠心と深い愛情
和犬の最大の魅力は、飼い主への一途な愛情です。柴犬や甲斐犬に代表されるように、心を許した相手に対しては徹底的に尽くし、まるで「家族を守る」という使命感を持っているかのようです。
この忠誠心は、ただの「可愛いペット」という枠を超え、人生を共に歩む「パートナー」としての存在感を与えてくれます。毎日の生活の中で、飼い主に寄り添ったり、安心して眠る姿を見ると、その絆の深さを実感できるでしょう。
警戒心が強く勇敢
日本犬はもともと猟犬や番犬として活躍してきた歴史があり、家族や縄張りを守る本能が強いです。
例えば、知らない人が近づいてきたときに素早く反応したり、不審な物音に耳を立てて警戒する姿は、頼もしさを感じさせてくれます。都会でも一戸建て住宅で飼えば、自然と防犯効果を発揮してくれるでしょう。
丈夫な身体と高い運動能力
日本犬は日本の厳しい自然環境に適応してきたため、健康的で丈夫な体を持っています。狩猟犬としての血を引いているため、持久力や瞬発力も抜群です。
登山やキャンプなどアウトドアが趣味の飼い主にとっては最高の相棒になり、一緒に自然を楽しむことができます。特に北海道犬や四国犬のように運動能力が高い犬は、飼い主のライフスタイルをよりアクティブにしてくれる存在です。
日本犬を飼うデメリット

一方で、日本犬には独特の気質や強い本能があり、それが飼育の難しさにつながることもあります。デメリットを理解しておくことで、トラブルを防ぎ、より良い関係を築くことができます。
神経質で過敏なときには心のケア
日本犬は繊細で神経質な一面を持っており、環境の変化や知らない人との接触にストレスを感じやすい傾向があります。
例えば、柴犬は「初対面の人に撫でられるのを嫌がる」ことがよくあります。これは決して性格が悪いのではなく、警戒心が強い日本犬らしい特徴です。
このため、子犬の頃からの社会化トレーニングや、落ち着ける居場所を用意することがとても重要です。
運動不足だとストレスが溜まりやすい
日本犬は体力があり、狩猟犬としての本能から「走りたい・動きたい」という欲求が強いです。
散歩の時間が短すぎたり、運動をさせない日が続くと、ストレスから吠え癖・噛み癖・家具を壊すなどの問題行動につながることもあります。
特に北海道犬や秋田犬のような中型〜大型犬は、毎日の運動量をしっかり確保できないと飼いにくさを感じるでしょう。
しつけに一貫性が求められる
日本犬は賢い反面、頑固で自立心が強いため、飼い主が一貫性のない態度を取ると混乱してしまいます。
「今日は許すけど明日はダメ」という対応は逆効果で、ワンちゃんにストレスを与える原因になります。主従関係をはっきりさせ、毅然とした態度で接することが大切です。
日本犬と長く暮らすためのポイント

日本犬は忠実で賢い反面、警戒心が強く、体力も豊富なため、適切な接し方が求められます。和犬の特性を理解し、飼い主が生活の中で工夫を重ねることで、より豊かで長い時間を共に過ごすことができます。
子犬の頃からしつける
日本犬は非常に賢く学習能力が高いため、子犬期からのしつけがカギになります。特に重要なのは以下の3点です。
- 基本のコマンド(おすわり・待て・来い)を一貫して教える
- 社会化トレーニングを通して、人や犬、音や環境に慣れさせる
- 主従関係を明確にすることで、安心して行動できるようにする
日本犬は頑固さも持っているため、甘やかしすぎたりルールが曖昧だと、飼い主の言うことを聞かなくなることもあります。逆に、毅然とした態度で一貫性を持って接すれば、一生懸命応えようとしてくれるのが日本犬の魅力です。
必ず散歩や運動をさせる
和犬は本来、猟犬や番犬として発展してきたため、毎日の十分な運動が欠かせません。
- 小型の柴犬でも 1日2回、合計1時間以上 の散歩が理想
- 中型犬(北海道犬・甲斐犬・紀州犬・四国犬)は 1回30〜60分の散歩を2回 + 週末のドッグランや山歩き
- 秋田犬のような大型犬は 体力維持のために1日2時間前後 の運動が必要
ただ歩くだけでなく、ボール遊びやアジリティなど、頭と体を同時に使う遊びを取り入れると満足度が高まり、問題行動の予防にもつながります。
精神的な安定を意識する
日本犬は忠実で飼い主に強い愛情を示しますが、その分孤独に弱い面もあります。長時間の留守番が続くと不安やストレスを抱えやすいので、留守番の時間を徐々に慣らしたり、安心できるスペースを作る工夫が大切です。
また、褒めるしつけを中心にして「安心できる存在」であることを伝えると、信頼関係がより深まります。
不安なことは専門家への相談
日本犬の気質は独特で、しつけや行動で悩む飼い主も少なくありません。
- 無駄吠えが止まらない
- 散歩中に他の犬に強く反応してしまう
- 留守番が苦手で落ち着かない
こうした場合、一人で抱え込むよりも獣医師やドッグトレーナーに早めに相談する方が安心です。特に、地域にいる日本犬に詳しいブリーダーや保存会のネットワークを活用すると、その犬種ならではの的確なアドバイスを得られます。
まとめ
日本犬は、日本の自然や生活様式に適応して発展してきた誇るべき犬種です。柴犬や秋田犬をはじめとする6犬種は、それぞれが独自の気質と魅力を持ち、忠実で勇敢なパートナーとして私たちの暮らしを豊かにしてくれます。
一方で、警戒心の強さや運動量の多さといった特性もあるため、十分な理解と準備が欠かせません。子犬期からのしつけ、日々の運動、そして精神的なケアを大切にすることで、和犬の魅力を最大限に引き出せます。
日本犬は「可愛いペット」を超え、一生を共に歩む心強い伴侶となる存在です。信頼関係を築きながら、長く健やかに暮らすための工夫を続けていきましょう。