犬種紹介
著者:吉村貴幸
公開日:2025/09/02/更新日:2025/09/02
臭くない犬はいる?体臭が少ない犬の特徴と臭い対策を解説

犬を迎えたいけれど「部屋が臭くならないか心配」という声は少なくありません。犬の体臭は犬種や体質によって差がありますが、原因を理解し日々のケアを行えば大きく抑えられます。
本記事では、犬の体臭が生まれる仕組み、臭いが少ない犬の特徴やおすすめ犬種10選、さらに毎日できる具体的な対策を解説します。快適に暮らしながら、ワンちゃんの健康と清潔を守る方法を学んでいきましょう。
犬の体臭や独特な臭いが発生する原因

犬の体臭は「犬だから仕方ない」と思われがちですが、実はその発生メカニズムには科学的な理由があります。原因を理解すれば、適切な予防やケアができるようになります。
汗や汚れによる体臭
人間と異なり、ワンちゃんの体には体温調節のためのエクリン腺はほとんどありません。その代わり、全身にアポクリン腺が存在し、ここから分泌される汗が皮膚表面の細菌に分解されると臭いが発生します。さらに皮脂腺から分泌される皮脂が被毛に絡みつき、放置すると酸化して臭いの原因となります。
特に散歩で泥やホコリを浴びたとき、換毛期で抜け毛が多いときは、汚れが皮脂と混ざり合い「犬独特の臭い」が強まりやすい傾向があります。
歯周病による口臭
犬の口臭は多くの場合、歯垢や歯石の蓄積によるものです。歯周病菌が繁殖すると口の中でガスが発生し、強烈な臭いとなって漂います。さらに歯周病は口腔内だけの問題にとどまらず、菌が血流を介して心臓や腎臓に悪影響を及ぼす可能性があるため、命に関わる病気につながることもあります。
「口が臭い」と感じたら、単なる生活臭ではなく病気のサインであることを忘れてはいけません。
排せつ物による臭い
ワンちゃんは排せつ後に自分でお尻をきれいにできないため、便や尿が被毛に付着すると臭いが残ります。特にお尻の毛が長い犬種は要注意で、付着物が乾燥して固まり、さらに雑菌が繁殖して悪臭を放つケースもあります。
定期的なシャンプーや部分カットはもちろん、散歩帰りにお尻を拭いてあげる習慣を持つと効果的です。
肛門腺に分泌物が溜まることによる臭い
犬の肛門には「肛門腺」と呼ばれる小さな袋があり、ここに分泌物が溜まります。これは縄張りを示すためのマーキングにも関わる重要な分泌物ですが、自然に排出されないと強烈な魚臭のような悪臭を放ちます。
放置すると炎症や破裂のリスクもあるため、定期的なケアが欠かせません。
耳の病気による臭い
垂れ耳のワンちゃんは耳の中の通気性が悪く、湿気がこもりやすいため、細菌や真菌が繁殖しやすい環境になります。その結果、外耳炎やマラセチア感染を引き起こし、強い耳の臭いが発生することがあります。耳から酸っぱい臭いやカビのような臭いがする場合は、病気のサインかもしれません。
臭くない・体臭が少ない犬の特徴

犬の体臭は犬種や体質によって大きく異なります。臭いが少ないとされる犬種には、いくつか共通する身体的特徴があります。
これらの特徴を知っておくことで、犬種選びの参考になるだけでなく、日常のケア方法の工夫にも役立ちます。
被毛がシングルコートの犬種
犬の被毛は大きく「ダブルコート」と「シングルコート」に分けられます。
- ダブルコート:オーバーコート(外側の毛)とアンダーコート(内側の毛)の二重構造。寒さに強いが、換毛期に大量の毛が抜け、皮脂や汚れがたまりやすく臭いやすい。
- シングルコート:一本の毛のみで構成され、換毛期がなく抜け毛が少ない。皮脂腺の数も少なく、臭いがこもりにくい。
そのため、シングルコートの犬種は臭いが少なく、アレルギー体質の人にも比較的向いています。お掃除の負担も減るので、忙しい飼い主さんにとって大きなメリットです。
しわやたるみが少ない犬種
皮膚のしわやたるみは、実は「臭いの温床」になりやすい部分です。
しわの間には汗や皮脂がたまりやすく、そこに細菌や真菌が繁殖すると独特の酸っぱい臭いやカビ臭が発生します。特に夏場は湿気がこもりやすいため、注意が必要です。
一方、しわが少ない犬種は皮膚が空気に触れやすく、常に清潔な状態を保ちやすいのが特徴。臭いが少ないだけでなく、皮膚病の予防にもつながります。
立ち耳の犬種
耳の形は臭いに大きく影響します。
- 垂れ耳:通気性が悪く蒸れやすいため、外耳炎のリスクが高い。耳から独特の臭いが発生することも。
- 立ち耳:風通しが良く湿気がこもりにくいため、耳の中が清潔に保たれやすい。
立ち耳の犬種は、耳掃除の頻度が少なくても健康を保ちやすいというメリットがあります。耳の臭いトラブルが少ないことも、体全体の臭いが控えめにつながるのです。
短毛な犬種
短毛の犬は被毛が汚れにくく、手入れもシンプルです。シャンプーやタオルでの拭き取りが簡単にできるため、常に清潔を保ちやすいのが強みです。
一方で、長毛犬は汚れや皮脂が毛に絡まりやすく、換毛期には抜け毛が臭いの原因になります。短毛犬はそうしたリスクが少なく、臭いが発生してもすぐにケアできるため、全体的に体臭が少ない傾向があります。
臭いが少なく飼いやすい犬種10選
ここでは「体臭が少ない」という特徴に加え、性格や飼いやすさ、注意点なども含めて詳しく紹介します。
トイプードル

トイプードルはシングルコートで抜け毛が少なく、体臭も控えめな犬種です。さらにトリミングによって常に清潔な状態を維持できるため、臭いがこもりにくいのが特徴です。知能が高く学習能力に優れているため、しつけがしやすく初心者にも安心。甘えん坊で家族に寄り添う性格から、日本でも圧倒的な人気を誇ります。ただし毛は伸び続けるため、月1回程度のトリミングは欠かせません。
イタリアングレーハウンド

スリムで優雅な見た目のイタリアングレーハウンドは、短毛で抜け毛が少なく、体臭も非常に控えめです。骨格が細いため、シャンプーやお手入れも簡単。性格は穏やかで無駄吠えも少なく、静かな生活を望む家庭に適しています。ただし寒さに弱いので、冬は防寒対策が必要です。飼い主に対して忠実で、穏やかなパートナーになってくれます。
マルチーズ

純白の被毛が魅力的なマルチーズもシングルコートで、体臭や抜け毛が少ない犬種です。性格は愛情深く、飼い主と常に一緒にいたがる甘えん坊タイプ。小型犬なので室内飼育に向いており、集合住宅でも飼いやすいのがメリットです。ただし毛が長いため、絡まりやすく汚れやすい点には注意が必要。定期的なブラッシングで美しい毛並みを保ちましょう。
パピヨン

耳の飾り毛が蝶のように広がる姿から名づけられたパピヨンは、シングルコートで臭いが少なく、比較的清潔を保ちやすい犬種です。活発で好奇心旺盛な性格で、運動量も適度に必要とします。知能が高く学習能力があるため、トレーニングを楽しむ家庭におすすめです。抜け毛は多少ありますが、臭いが強く出にくい点は魅力のひとつです。
バセンジー

「吠えない犬」として有名なバセンジーは、短毛で体臭がほとんどなく、犬独特の臭いが苦手な人にも向いています。さらに猫のように自分で毛づくろいをする習性があるため、常に清潔を保てるのが特徴です。性格は独立心が強く、少し気難しい面もありますが、無駄吠えが少ないため静かな環境でも安心して飼えます。
ビションフリーゼ

ビションフリーゼはふわふわのシングルコートを持ち、体臭が少ない犬種として知られています。性格は明るく陽気で、人懐っこいため、家庭にすぐに馴染みます。抜け毛も少なく、アレルギーが心配な人にも比較的飼いやすいのがポイント。ただし被毛は伸び続けるため、トリミングや毎日のブラッシングでのお手入れが欠かせません。
チワワ(スムースコート)

チワワの中でも短毛タイプの「スムースコート」は、被毛が短く汚れが付着しにくいため、臭いが少ない傾向があります。小さな体ながら勇敢で、飼い主を守ろうとする健気な性格が魅力です。室内でも十分飼えるため、初心者や高齢者にも人気があります。ただし寒さに弱いため、冬場の温度管理には注意が必要です。
ウィペット

ウィペットはイタリアングレーハウンドに似た体型を持ち、短毛で臭いが少なく清潔を保ちやすい犬種です。性格は穏やかで落ち着いており、家庭でのんびり過ごすのが好きなタイプ。走ることが大好きなので、時々広い場所で思いきり走らせてあげることが大切です。無駄吠えも少なく、都会の集合住宅でも飼いやすい犬種です。
サモエド

真っ白なモフモフの被毛を持つサモエドはダブルコートですが、皮脂分泌が少ないため、臭いがほとんどしない珍しい犬種です。寒冷地での生活に適応してきた歴史から、清潔でさらっとした毛質を維持しています。「サモエドスマイル」と呼ばれる笑顔のような表情で人を癒し、性格も明るく社交的です。ただし大型犬なので、運動量が多く飼育スペースの確保が必要です。
シーズー

シーズーはシングルコートで抜け毛が少なく、臭いも控えめです。性格は穏やかでマイペース、人懐っこいため家庭犬として非常に人気があります。小型犬であるため、マンションやアパートでも飼いやすいのが特徴です。被毛は伸び続けるので、定期的なカットやブラッシングで清潔を保ちましょう。シーズーは高齢者にも向いており、癒しの存在になってくれます。
犬の体臭を抑えるための対策方法

どんなに体臭が少ない犬種であっても、適切なケアを怠れば臭いは必ず発生します。犬の臭いは飼い主の生活環境にも大きく影響するため、日常のちょっとした習慣がとても重要です。ここでは、誰でも実践できる具体的な対策を紹介します。
日々のブラッシングと拭き取り
ブラッシングは、抜け毛や汚れを取り除くだけでなく、皮膚の血行促進やリラックス効果もあります。毎日数分のブラッシングを習慣にすることで、臭いの原因となる皮脂やホコリを防げます。
散歩後は濡れタオルやペット用シートで足や体を拭くだけでも、雑菌や花粉の付着を抑えられ、臭い予防につながります。
定期的なシャンプー
月に1〜2回を目安に、犬専用の低刺激シャンプーを使って洗いましょう。洗浄力が強すぎるシャンプーは皮膚のバリアを壊し、逆に皮脂の分泌を促して臭いが強くなることもあります。
シャンプー後はしっかり乾かすことも大切です。湿ったまま放置すると雑菌やカビが繁殖し、かえって臭いが悪化してしまいます。
日常的な歯磨き
口臭は体臭以上に飼い主を悩ませることが多い問題です。歯磨きを毎日の習慣にすることで、歯垢や歯石の蓄積を防ぎ、歯周病や内臓疾患の予防にもつながります。
歯ブラシに慣れない子には、歯磨きシートやデンタルガムを併用すると無理なくケアできます。
定期的な肛門腺絞り
肛門腺は放置すると強烈な臭いを放つため、分泌物が溜まりやすい犬種では1〜2か月に一度を目安に絞りましょう。自宅でできない場合は、トリマーや獣医に依頼するのが安心です。
垂れ耳の犬種はこまめに耳掃除
耳の中は湿気がこもりやすく、外耳炎やマラセチア感染の原因になります。イヤークリーナーを使って週1回程度お手入れをすると清潔が保てます。耳を触られることに慣れさせると、日常的にスムーズにケアできます。
毎日の食事を見直す
食べ物は体臭や口臭に直結します。油分や添加物が多いフードは体臭を強める原因になりやすいため、オメガ3脂肪酸や良質なたんぱく質を含むフードを選びましょう。消化吸収の良い食事を与えることで、便臭や皮膚の健康改善にもつながります。
まとめ
犬の体臭は「犬だから仕方ないもの」ではありません。汗や皮脂、歯周病や耳の病気、肛門腺の分泌物など原因を知れば、正しいケアで大きく改善できます。確かにシングルコートや短毛、立ち耳など体臭が少ない傾向の犬種は存在しますが、どの犬種でも日常のお手入れを怠れば臭いは強くなります。毎日のブラッシングや歯磨き、適度なシャンプー、耳や肛門腺のケア、栄養バランスの整った食事を習慣にすることで、清潔さと健康を同時に守れます。
大切なのは「臭わない犬」を探すことよりも、「臭わせない工夫」を続けること。ワンちゃんと飼い主さんが共に快適で幸せに暮らすために、今日からできるケアを積み重ねていきましょう。