ペットロス
ペットロスとは?後からくる辛い症候群のチェック方法・症状を解説
ペットロスとは?後からくる辛い症候群のチェック方法・症状を解説

ワンちゃんとの別れは、言葉では表せないほどの深い悲しみを伴います。長年一緒に暮らし、笑い合い、支え合ってきた存在を失う喪失感は、まるで家族を失うのと同じです。
中には、「最初は平気だったのに、時間が経ってから涙が止まらなくなった」「写真を見るだけで胸が苦しくなる」と感じる人もいるでしょう。
それは、単なる一時的な悲しみではなく、「ペットロス症候群」という心の反応かもしれません。
この記事では、ペットロスが起こる仕組みや、後からくる悲しみの理由、身体・心への影響、セルフチェック方法、そして乗り越えるための実践的なステップを、動物福祉と心理学の視点から詳しく解説します。
あなたの愛したワンちゃんとの絆を大切にしながら、心の回復へとつながるヒントをお伝えします。
ペットロスとは?悲しみが後からくる理由

ペットロス(ペットロス症候群)は、単なる「ペットを失った悲しみ」ではなく、心と体の両方に深い影響を与える心理的反応です。
特に、亡くなった直後よりも、少し時間が経ってから強い悲しみが押し寄せる「遅延型ペットロス」は多くの飼い主さんに見られます。
ペットロス症候群の定義と背景
ペットロス症候群とは、愛するペットを失ったことによる強い悲嘆反応が、数週間から数か月、時には数年にわたって続き、生活に支障をきたす状態を指します。
現代では、ワンちゃんは「飼う」存在から「家族の一員」「心のパートナー」へと位置づけが変化しています。
一緒に過ごす時間が長く、日常のすべてに存在していたからこそ、喪失の痛みは深く、心のバランスを崩すほどの影響を与えることがあります。
なぜペットロスは「病気」として扱われるのか
悲しみは自然な感情ですが、それが長期間続き、睡眠・食事・社会生活に支障をきたすほど強くなると、「適応障害」や「うつ病」として診断される場合もあります。
世界保健機関(WHO)も近年、「愛着対象の喪失による悲嘆」を精神医学的に重要視しており、ペットの死もそれに含まれます。
つまり、ワンちゃんを失うことは“単なるペットの死”ではなく、人間関係の喪失と同等のストレスを生むライフイベントとして扱われるのです。
悲しみが「後からくる」のはなぜ?
多くの飼い主さんは、ペットが亡くなった直後はショックのあまり、現実を直視できず、感情が麻痺したような状態になります。
看病や葬儀の手続きなどに追われるうちに、悲しみを感じる暇もなく「動くこと」で心を守っている状態です。
しかし、時間が経ち、生活のリズムが戻り始めた頃、ふとした瞬間に「もういない」現実が襲ってきます。
このとき、抑えていた感情が一気に噴き出し、涙が止まらない・無気力になる・体調を崩すといった“遅延反応”が起こります。
心理学的には、これを「防衛反応の解除」と呼び、人間の心が現実を受け入れ始めた証ともいえます。
ペットロス症候群の感情の流れ

ペットロスを経験した多くの飼い主さんは、「悲嘆の5段階(キューブラー・ロスモデル)」と呼ばれる感情の流れを自然とたどります。
これは人間が「喪失」という大きな出来事を受け入れる際に心の中で起こる心理的プロセスです。
各段階を理解することで、「今の自分の気持ちはおかしくない」と受け止めやすくなり、少しずつ癒しへの道が見えてきます。
否認(Denial)
「そんなはずない」「まだあの子はどこかにいる気がする」——。
これは現実を受け止める準備が整っていない心の防衛反応です。突然の別れは、人の脳にとって大きな衝撃であり、愛情が深ければ深いほど、心は“現実”を拒もうとします。
この段階では、ワンちゃんの声が聞こえた気がしたり、部屋の隅に姿を感じることもあります。
それは決しておかしなことではなく、心がゆっくりと喪失を受け入れようとしている自然な過程です。
怒り(Anger)
「どうして助けてあげられなかったの?」「あの時もっと早く病院に行っていれば…」
悲しみの裏側には、強い怒りや後悔が潜んでいます。
この怒りは、獣医師や家族、時には自分自身に向けられることもあります。
しかし、心理学的に見ると、この“怒り”は愛情の裏返しであり、「あの子を救いたかった」「守りたかった」という想いの強さの表れです。
感情を否定せず、「これも愛の一部なんだ」と受け止めることが、次の段階へ進む第一歩になります。
取引(Bargaining)
「もしあの時こうしていれば…」「神様、もう一度だけ会わせて」
失った現実をなんとか変えたいという気持ちから、過去や運命と“取引”しようとする段階です。
この段階では、後悔の念が最も強くなる時期でもありますが、同時に「何かをしたい」というエネルギーも生まれます。
その思いを、手紙を書いたり、メモリアルグッズを作るなどの“形”に変えることが、少しずつ心を落ち着かせてくれます。
抑うつ(Depression)
現実を受け入れ始めた頃に、深い悲しみが押し寄せます。
「もうどうでもいい」「何をしても楽しくない」と感じるのは、心が限界まで悲しみを抱えたサインです。
この時期は、無理に元気を出そうとせず、泣く・休む・眠るといった“心の静養”を優先しましょう。
心理カウンセリングでは、この段階を“癒しの谷”と呼びます。谷を抜けることで、やがて心は再び光の方向へと向かい始めます。
受容(Acceptance)
「もういないけれど、たくさんの幸せをくれた」
そう感じられるようになった時、心はゆっくりと回復の道を歩み始めています。
受容とは、忘れることではなく、「存在を感謝の形で心に残すこと」。
ワンちゃんがくれた愛情を糧に、日々を大切に過ごせるようになるとき、それは立ち直りのサインです。
ペットロス症候群の主な症状

ペットロス症候群は、心の痛みがそのまま身体や行動にも影響を及ぼす状態です。
「少しおかしいかも」と思っても、それは異常ではなく、愛するワンちゃんを失った心の反応です。
ここでは、心身に現れやすい主なサインを具体的に見ていきましょう。
身体的な症状
ペットロスによるストレスは、私たちの体にもはっきりとした反応を引き起こします。
最も多いのは不眠や浅い眠りです。ワンちゃんがいない静かな夜に孤独を感じたり、「夢の中で会えるかもしれない」と願って眠れなくなる人もいます。
また、食欲不振や過食もよく見られます。悲しみから食べる気がしなくなる一方で、心の空白を埋めるように食べ過ぎてしまう人もいます。
さらに、頭痛・胃痛・肩こり・倦怠感・動悸といった身体症状が現れることもあります。
これは、強いストレスが自律神経を乱し、血流やホルモンバランスに影響を与えているためです。
「体が重い」「何もやる気が出ない」と感じるとき、それは体からの“心のSOS”でもあります。
時には免疫力が低下し、風邪を引きやすくなる人もいます。
心と体は密接に結びついており、どちらかが弱るともう一方にも影響が出るのです。
精神的な症状
心の中では、さまざまな感情が入り混じります。
多くの人が経験するのが強い抑うつ感や無気力です。
「何をしても楽しくない」「何のために生きているのかわからない」と感じることがあります。
また、罪悪感もペットロス特有の感情です。
「もっと早く病院に行けばよかった」「あのとき気づいてあげられたら」と、自分を責めてしまうのです。
しかし、これらの後悔は、ワンちゃんを深く愛していた証でもあります。
孤独感や焦燥感も強くなりがちです。
朝の散歩道や、ワンちゃんがよく寝ていた場所を通るたびに、胸が締め付けられるような寂しさを感じることもあるでしょう。
一方で、「あの子が見守ってくれている気がする」と感じる人もいます。
それもまた、喪失を受け入れようとする心の自然な働きです。
このような感情が長く続く場合は、心が少し疲れすぎているサイン。無理をせず、誰かに話を聞いてもらうことが大切です。
行動の変化
ペットロスは、行動にも影響を及ぼします。
たとえば、「人に会いたくない」「外に出る気がしない」といった引きこもり傾向が出ることがあります。
周囲の人が気を遣ってくれても、言葉を交わすのがつらい時期もあるでしょう。
仕事や家事への意欲が低下し、集中力が続かなくなる人もいます。
特に、自宅で過ごす時間が長い人ほど、ワンちゃんの不在を強く感じやすく、生活リズムを立て直すのに時間がかかる傾向があります。
また、心の痛みをまぎらわせるためにアルコールや睡眠薬などに頼ってしまうケースも少なくありません。
これは一時的な心の防衛反応ですが、長期化すると逆に心の回復を遅らせてしまいます。
逆に、ペット用品や写真をすべて片づけてしまう人もいれば、逆に何も捨てられず、部屋をそのままにしてしまう人もいます。
どちらも「心が現実を受け入れるためのプロセス」であり、どちらが正しいということはありません。
重要なのは、自分のペースを大切にしながら、少しずつ前へ進むことです。
あなたの状態は?ペットロス症候群の簡易チェックリスト

以下の項目に「はい」が多いほど、ペットロス症候群の傾向があると考えられます。
- 思い出すと涙が止まらなくなる
- 食欲や睡眠に変化がある
- 何もする気が起きない
- 他人と話すのがつらい
- ワンちゃんの写真を直視できない
- 「自分のせいだ」と強く感じる
- 時々、ワンちゃんの気配を感じる
- 新しいペットを迎えることに罪悪感がある
3つ以上当てはまる場合は、心が疲れているサインです。無理せず、信頼できる人に話すことから始めましょう。
ペットロスを乗り越えるための対処法

ペットロスの悲しみは、時間が解決するものではありません。
しかし、少しずつ“心が癒える方向”に向かうための行動や考え方はあります。
焦らず、自分のペースで取り組むことが何よりも大切です。
ここでは、専門家も推奨する6つのステップを紹介します。
自分の感情を否定せずに受け入れる
まず大切なのは、「悲しんではいけない」「早く立ち直らなきゃ」と自分にプレッシャーをかけないことです。
涙を流すのは自然な反応であり、心が癒えるための“浄化作用”です。
心理学では、感情を無理に押さえ込むと、後からより強く反動が出ることが知られています。
「悲しい」「寂しい」「悔しい」——どんな感情も、あなたの中でワンちゃんと過ごした日々の証です。
一つひとつの感情を否定せずに受け止め、「それほど大切だったんだ」と自分に優しく語りかけてください。
心の整理は、悲しみを“消す”ことではなく、“悲しみと共に生きる方法”を見つけることから始まります。
家族や友人、カウンセラーに話す
誰かに話すことは、心を癒す最も効果的な方法の一つです。
「話す=放す」とも言われるように、言葉にすることで、心にこびりついた悲しみが少しずつ外へ出ていきます。
特に、同じようにペットを失った経験のある人や、動物福祉・心理分野のカウンセラーは、あなたの痛みに寄り添ってくれます。
近年は、ペットロス専門のカウンセリングや**グリーフケア(悲嘆ケア)**の場も増えています。
「話したところで何も変わらない」と思うかもしれませんが、実際には“聴いてもらえる安心感”が、心の回復を大きく後押しします。
悲しみを分かち合うことは、癒しの第一歩です。
ペットとの思い出を大切にする
ワンちゃんを無理に忘れようとする必要はありません。
むしろ、「思い出を残すこと」が心の整理につながります。
たとえば、
- 写真をアルバムにまとめる
- 手紙を書いて気持ちを伝える
- メモリアルグッズを作る
- SNSで思い出を投稿する(同じ経験者とつながる)
こうした行動は、「あの子との時間を肯定的に受け入れる作業」です。
動物心理学の研究でも、思い出を“語る”ことがグリーフプロセスの促進に効果的であるとされています。
思い出を閉じ込めるのではなく、心の中に“生き続ける存在”として抱いていくことが大切です。
ペットの供養・埋葬を行う
ペットロスの回復において、「供養」は非常に重要な節目です。
お別れの儀式を行うことで、心の中で“区切り”をつけやすくなります。
お花を供えたり、お骨を納めたりすることは、悲しみを癒す「行動による癒し(アクティブ・グリーフ)」です。
動物葬祭業者の中には、宗教にとらわれずに個別供養をしてくれる施設も増えています。
また、自宅に小さなメモリアルコーナーを作るのもおすすめです。
お花やお気に入りの写真を飾り、「今日もありがとう」と語りかけることで、ワンちゃんがあなたの心の中で“永遠に生き続ける”場所ができます。
無理に前向きになろうとしない
「早く元気にならなきゃ」と焦る必要はありません。
悲しみの深さは人それぞれであり、立ち直りのスピードに“正解”はありません。
人間の心には「揺り戻し」という働きがあり、立ち直ったと思っても、ふとした瞬間に涙があふれることがあります。
それは後退ではなく、心が癒える過程で起こる自然な波です。
無理に明るく振る舞おうとせず、静かに過ごしたいときは休みましょう。
あなたがゆっくり回復していく姿を、ワンちゃんもきっと優しく見守っているはずです。
新しく子犬を迎える
新しい命を迎えることは、ペットロスを癒す一つの選択肢です。
ただし、それは「前の子の代わり」ではなく、「新しい出会い」として迎えることが大切です。
悲しみが癒えていないうちに迎えると、無意識のうちに前のワンちゃんと比べてしまうことがあります。
しかし、時間をかけて心が整うと、「また誰かを幸せにしたい」と思える瞬間がやってきます。
そのときこそ、新しい家族を迎える準備ができたサインです。
新しい子を通じて、あなたの中の“愛の循環”が再び動き出すのです。
ペットロスから新しい子犬を迎えるタイミング

ワンちゃんを失った後、「もう二度と飼えない」と感じる人もいれば、「また命を守りたい」と思う人もいます。どちらの気持ちも正しく、どちらも愛情の形です。
ただ、新しい子犬を迎えるときに大切なのは、心の準備ができているかどうかです。悲しみの中で焦って迎えてしまうと、無意識に前のワンちゃんと比べてしまい、つらい気持ちが再び強くなることもあります。これは心がまだ癒えていないだけで、決して悪いことではありません。
「代わり」ではなく、「新しい命」として迎える気持ちを持てたときが、本当のタイミングです。前の子との日々があなたに“命の尊さ”を教えてくれたからこそ、次の出会いがより深い絆へとつながります。たとえば、「もう一度あのぬくもりを感じたい」と自然に思えたなら、それは回復のサインです。
新しい子を迎える前に、生活や家族の準備、そして自分の気持ちを見つめ直してみましょう。写真を見て「悲しい」よりも「懐かしい」と感じられるようになっていれば、心は少しずつ整っています。
不思議なことに、多くの人は新しい子と出会うときに「導かれたような縁」を感じるといいます。それはきっと、天国のワンちゃんがあなたに託した“優しさのバトン”なのかもしれません。新しい命を迎えることは、前の子を忘れることではなく、その愛を未来へつなぐこと。あなたが再び笑顔を取り戻すことこそ、あの子がいちばん願っていることです。
まとめ
ペットロスは、深く愛した証です。
悲しみが後から押し寄せたり、心や体が不調になるのは、ワンちゃんとの絆がそれだけ強かったからこそ。
悲しみを無理に消すのではなく、少しずつ“感謝”へと変えていくことが、心の癒しにつながります。
思い出を形に残し、誰かに話し、時には静かに涙を流す——そのすべてが、前に進むための大切なプロセスです。
そして、また新しい命と出会う日が来たとき、あなたの中の優しさはさらに大きく育っています。
あなたが再び笑顔を取り戻すことこそ、天国のワンちゃんがいちばん願っていること。
焦らず、自分のペースで、少しずつ“心の回復”を歩んでいきましょう。
Breeder Familiesについて
BreederFamiliesのブリーダーを通じて ワンちゃんをお迎えすることが、 ペットをとりまく社会課題の解決に繋がります。
私たちが目指すのは、営利優先の悪徳ブリーダーを減らし、責任と愛情を持つ優良ブリーダーを支援することで、ワンちゃんの福祉が守られる社会の実現。
目の前の子犬だけでなく、親犬や引退犬も大切にされる環境を作り上げ、すべてのワンちゃんに優しいブリーディング環境の普及にむけて活動しています。