犬種紹介
著者:吉村貴幸
公開日:2025/05/27/更新日:2025/05/27
狼みたいな犬とは?狼っぽいワイルドな犬種10選やその特徴を解説

狼のような凛々しい見た目や神秘的な雰囲気を持つワンちゃんに憧れる方は多いのではないでしょうか。実際に、野性味あふれる容姿や高い知性、忠誠心を備えた犬種は、他の犬とはひと味違う魅力があります。
この記事では、狼に似た外見や性質を持つ犬種を10種ピックアップしてご紹介。さらに、狼の血を色濃く引く「ウルフドッグ」の特徴や、飼育時に気をつけたいポイントまで、動物福祉の観点も交えて詳しく解説します。見た目の魅力だけでなく、その奥にある「生き物としての本質」にも目を向けて、責任ある飼育を考えるきっかけとなれば幸いです。
狼みたいな犬とは?

狼のような外見や特徴を持つ犬種の定義と背景
「狼みたいなワンちゃん」と聞くと、灰色の毛並みに鋭い目つき、ピンと立った耳など、ビジュアル的なイメージが強いかもしれません。確かに見た目は大きな要素ですが、実はそれだけではありません。
狼に似たワンちゃんの特徴には以下のようなものが挙げられます:
- 立ち耳とアーモンド形の目、シャープな顔立ち
- 厚いダブルコートの被毛(寒冷地に強い)
- 高い自立性と知性
- 警戒心と忠誠心の強さ
- 原始的な犬種としての歴史
- 一部に狼との交配による血統が含まれる
こうした特徴を持つ犬種は、家畜化が進む以前の「古代犬種」に多く見られます。自然界に近い性質を保っており、人と共存しながらも本能や野性の名残を感じさせる存在です。
狼に似ている犬種10選
ここでは、外見・DNA・性格の3点から、狼に似ているとされる犬種を紹介します。それぞれが異なる魅力を持っており、見た目だけでなく性格や飼いやすさにも注目しましょう。
柴犬

日本を代表する小型犬で、素朴ながらもキリッとした表情が印象的。最新の遺伝子研究により、柴犬はDNAレベルで最も狼に近い犬種のひとつとされています。
もともと猟犬として山岳地帯で活躍していた背景があり、警戒心が強く、飼い主以外には距離を置く慎重な性格も、野性味を感じさせます。しつけには根気が必要ですが、信頼関係が築けると深い絆で結ばれる魅力的なワンちゃんです。
チャウチャウ

中国の古代犬で、「歩くぬいぐるみ」とも呼ばれる独特の姿が特徴的。青黒い舌やライオンのようなたてがみ状の毛、直立した後ろ脚など、独自の進化を遂げてきた犬種です。
遺伝子的には原始的な特徴が多く、狼に近いDNA構造を持つといわれています。頑固で自立心が強く、しつけには一貫性と経験が求められます。忠誠心が強いため、信頼できる飼い主に深い愛情を示します。
秋田犬

堂々とした体格と穏やかな性格で知られる日本原産の大型犬。忠誠心の強さは世界的にも有名で、「ハチ公」の物語でその名を広めました。
狩猟犬としての歴史を持ち、冷静沈着に獲物を追い詰める能力は狼にも通じるものがあります。飼い主に対しては非常に忠実ですが、他人や他犬に対しては警戒心を示すことが多く、社会化トレーニングは必須です。
アラスカン・マラミュート

極寒の地でそりを引く作業犬として活躍してきた犬種で、狼にそっくりな外見を持つことで知られています。大型で筋肉質、非常にパワフルな体格をしています。
群れでの協調性が高く、家族として迎え入れればとても友好的。ただし、運動量が非常に多いため、広いスペースとアクティブな生活スタイルが必要です。
バセンジー

アフリカで古代から存在する犬種で、「吠えない犬」として知られています。声帯の構造が特殊で、狼のような遠吠えに近い「ヨーデル」のような声を出します。
しなやかな体、野生動物のような身のこなし、自己判断力の高さが特徴で、原始的な犬種の特徴を色濃く残しています。愛情深い一方でマイペースな性格のため、ある程度の自由さを許容する飼育スタイルが求められます。
シベリアン・ハスキー

その美しいブルーの瞳と厚い被毛、精悍な顔つきは、まさに狼を彷彿とさせます。シベリアの先住民族と共に、ソリ犬としての役割を果たしてきた歴史があります。
性格は非常にフレンドリーで、人や他の犬とも仲良くできる社交性を持ちます。ただし、頑固でいたずら好きな一面もあり、脱走癖や探検心が強い子も多いため、しっかりした管理が必要です。
サールロース・ウルフドッグ

ジャーマン・シェパードとヨーロッパオオカミの交配から生まれた犬種で、見た目は限りなく狼に近いといわれています。非常に繊細で、人や環境に敏感に反応する特性があります。
一方で、強い群れ意識を持ち、信頼できる飼い主には深い愛情を示します。社会化不足によるストレスや問題行動も起こりやすいため、知識のある飼い主と安定した環境が必須です。
チェコスロバキアン・ウルフドッグ

チェコスロバキア軍によって、狼の能力と犬の訓練性を併せ持つ理想的な軍用犬として開発されました。見た目はサールロース同様、ほぼ狼ですが、より訓練性が高く、作業意欲も強いです。
ただし、家庭犬としては飼育難易度が高く、メンタルケアや運動の管理、長期間の信頼関係構築が求められます。
クンミング・ウルフドッグ

中国軍が軍用犬として育成した犬種で、見た目と行動の一部に狼の特徴を持っています。ジャーマン・シェパードと中国狼の交配を起源とし、現在では警察犬や麻薬探知犬など幅広い任務に使われています。
賢くて忠実、タフで適応力のある性格は、訓練環境下で真価を発揮しますが、一般家庭での飼育には相応の準備と経験が必要です。
アフガン・ハウンド

古代エジプト時代の壁画にも描かれているほど歴史のある犬種で、外見は華やかですが、内面は非常に独立心が強く、猟犬としての俊敏性も兼ね備えています。
他の犬種とは一線を画す気高さやマイペースな性格は、群れの中で行動していた狼の習性にも通じるものがあります。
狼の血が濃い犬種とは?

ウルフドッグと呼ばれる犬種の中でも、特に狼のDNAが75%以上を占める個体は「ハイパーセント・ウルフドッグ」と呼ばれます。見た目や行動は限りなく狼に近く、映画や写真では魅力的に映ることもありますが、飼育には非常に高い専門性が必要です。
- 人との信頼関係構築に時間がかかる
- 強い脱走欲求や狩猟本能が残っている
- 繁殖や販売に法的な制限がある(自治体によっては飼育禁止)
動物福祉の観点からも、安易な流通や飼育は避けるべきであり、こうした個体を迎えることが本当に適切かどうか、十分に検討する必要があります。
狼に似た犬を飼う際の注意点

狼に似たワンちゃんは、その外見と同様に、性格や本能にも狼の名残を色濃く残しています。見た目のかっこよさや珍しさだけに惹かれて安易に飼育を始めると、しつけがうまくいかず手放さざるを得ないケースも。
こうした事態はワンちゃん自身のストレスや不安を招き、福祉上も望ましいとは言えません。
ここでは、実際に迎える前に知っておくべき性格的・環境的な注意点を詳しく解説します。
性格としつけの難しさ
狼に似た犬種は、外見だけでなく精神的な特徴にも“野性”が残っています。そのため、以下のような傾向があります:
- 高い警戒心と自立性:多くの狼系犬種は、見知らぬ人や音、環境の変化に対して非常に敏感です。もともと番犬や狩猟犬として育てられてきた歴史もあり、「常に周囲を観察している」ような慎重な性格の子も少なくありません。初対面の人にすぐ懐くことは稀で、家庭内でも新しい家族に心を開くまでに時間がかかる場合があります。
- 命令では動かない「自分で考えるタイプ」:柴犬やチャウチャウ、ウルフドッグ系の犬種は、従順というよりも「信頼できる相手にしか従わない」傾向があります。しつけにおいても、単純な命令や強制は通用しづらく、飼い主との信頼関係の構築が最優先になります。
- 社会化の遅れが問題行動につながることも:警戒心が強い性格は、社会化不足と相まって「吠える・威嚇する・噛む」といった行動につながることもあります。子犬期からの適切な社会化(他人・犬・環境への慣れ)は不可欠で、プロのトレーナーによるサポートを受けるのも一つの選択肢です。
飼育環境に求められる条件
狼に似たワンちゃんたちは、多くが寒冷地出身の大型犬や作業犬であり、家庭内飼育にあたっては一般的な飼育環境よりもハードルが高くなることがあります。
- 広い運動スペースと長時間の散歩:アラスカン・マラミュートやシベリアン・ハスキーなどは、1日に2時間以上の運動が必要とされるほどエネルギー量が高い犬種です。運動不足はストレスの原因となり、破壊行動や無駄吠えなどの問題行動につながることがあります。室内に閉じ込めておくのではなく、広い庭や頻繁な散歩で発散させてあげましょう。
- 暑さに極端に弱い:ダブルコートを持つ犬種は寒さには強い一方、暑さに非常に弱いという特徴があります。夏場はエアコン管理が必須で、散歩も早朝や夜間に限るなどの工夫が必要です。日本の高温多湿な夏は、これらの犬種にとって命に関わるレベルの負担になることもあります。
- 脱走防止と安全対策:好奇心が強く探索本能の強い犬種は、ちょっとした隙に逃げ出すリスクがあります。フェンスや門は高くしっかりと施錠し、室内でも玄関の出入りや窓の開閉には細心の注意が必要です。また、ウルフドッグ系は逃走後に誤認逮捕(野生動物と見間違えられる)されるリスクもゼロではありません
- 騒音や刺激の少ない生活環境:神経質な子が多いため、都会の喧騒や頻繁な来客、騒がしい家庭環境はストレスの原因となります。静かで落ち着いた空間、決まったルーティンのある生活の方が安心しやすい傾向にあります。
飼い主に求められる「心の準備」
狼系のワンちゃんと暮らすということは、その野性や個性を尊重し、飼い主側も学び続ける姿勢を持つということです。以下のような意識を持って迎えることが望まれます:
- 思い通りに動かないことを前提に付き合う
- 自分本位ではなく「犬本位」で環境を整える
- 生涯にわたって根気強く寄り添う覚悟を持つ
彼らは「従う存在」ではなく「パートナー」としての関係性を築ける存在です。迎えることで得られる喜びも大きいですが、それ以上に「自分が試される」ような側面もあります。
まとめ|狼に似たワンちゃんの魅力と、迎える前に知っておくべきこと

狼のようなワイルドな外見を持つワンちゃんたちは、見た目のかっこよさだけでなく、古代犬種ならではの本能や知性、そして強い絆を築ける魅力を持っています。柴犬や秋田犬、ハスキーといった身近な犬種から、ウルフドッグのように狼の血を色濃く引く希少な犬種まで、その個性はさまざまです。
一方で、彼らの多くは自立心が強く、運動量や環境への配慮、しつけの難易度など、飼い主に高い責任が求められます。「かっこいいから」「珍しいから」という理由だけで選ぶのではなく、そのワンちゃんの本質と向き合い、生涯にわたって寄り添える覚悟があるかを考えることが大切です。
ワンちゃんにとっても、私たちにとっても幸せな暮らしを実現するために、「見た目の裏にある命と向き合う」ことからはじめましょう。