ブリーダー評価基準
著者:吉村貴幸
公開日:2024/11/22/更新日:2024/11/22
優良ブリーダーの見分け方⑫_健康管理をしっかり
ワンちゃんを新しい家族として迎える際、その健康状態の確認はとても大切です。健康管理がしっかりと行われている環境で育ったワンちゃんは、長期的な健康リスクが少なく、飼い主にとっても安心です。
この記事では、優良ブリーダーが行う健康管理の具体的な内容と、健康管理を怠る営利優先ブリーダーのリスクについて解説します。
健康管理の重要性
ワンちゃんの健康を守るための第一歩は、ブリーダーによる適切な健康管理です。健康状態が良好なワンちゃんは、家庭環境にも早く適応し、飼い主の生活にもスムーズに馴染むことができます。しかし、健康に問題を抱えたままのワンちゃんを迎えると、医療費や日々のケアが必要になるだけでなく、飼い主の精神的な負担も大きくなります。
例えば、「ただの下痢かと思ったら実は感染症だった」など、最初は軽い症状でも重大な病気が隠れていることがあります。
また、健康な親犬からしか健康な子犬は生まれません。親犬が健康であることは、ワンちゃんの健康を支える重要な要素であり、優良ブリーダーは親犬にも定期的な健康管理を徹底しています。
優良ブリーダーの健康管理
優良ブリーダーが日々行う健康管理は、ワンちゃんが健やかに育つための土台となります。以下の4つの項目に分けて詳しく解説します。
1. 日々の健康チェック
優良ブリーダーは、毎日ワンちゃんの健康状態を細かく観察し、異常がないか確認します。小さな変化でも見逃さず、早期発見・対応が可能になります。日々のチェック項目は以下の通りです。
- からだの各部位のチェック:全体の様子、目や耳、鼻、歯、爪、お尻など各部位の清潔さや異常を確認
- 歩き方や動作の確認:関節や筋肉の異常がないか観察し、歩行のスムーズさをチェック
- 排尿や排便:色や形、頻度をチェックし、消化器官の健康状態を把握
- 食事の量や体重の変化:体重の急な減少や食欲の減退がないか確認し、健康管理の基準に
2. 健康診断
優良ブリーダーは、ワンちゃんの健康を守るため、子犬と成犬のどちらにも定期的な健康診断を行います。
- 子犬の健康診断:子犬はお迎え前に健康診断を受け、感染症や寄生虫がいないことを確認します。基本的な発育状態のチェックを行い、健康な状態で飼い主のもとに迎えられるようにしています。
- 成犬の健康診断:成犬は年に1回以上の健康診断を受けることが法律で義務付けられており、繁殖犬の場合は繁殖適正の診断も行います。成犬は年齢や健康状態に応じて以下のような項目で検査を行います。
健康診断項目
- 身体検査:視診、触診、聴診、体温測定、体重測定など、全体の健康状態を確認
- 糞便検査:寄生虫の有無、腸内環境、血便の有無を確認
- 尿検査:腎臓や膀胱の病気、糖尿病、ホルモン疾患などをチェック
- 血液検査:貧血や炎症、肝臓や腎臓の機能、腫瘍などの検査
- レントゲン検査:腫瘍、関節の異常、腎臓や膀胱の結石の有無を確認
3. 駆虫
寄生虫の駆除も優良ブリーダーの重要な役割の一つです。外部寄生虫(ノミやマダニ)や内部寄生虫(フィラリア、小回虫など)はワンちゃんの健康に深刻な影響を及ぼすため、定期的な駆虫措置を講じています。
- 外部寄生虫:ノミやマダニによる皮膚疾患やアレルギーの予防を行います。
- 内部寄生虫:フィラリア症や腸内寄生虫の駆除を行い、寄生虫感染からワンちゃんを守ります。
4. ワクチン接種
ワンちゃんの免疫力を強化するためには、適切なワクチン接種が欠かせません。特に子犬は、生まれたばかりの頃は母犬から譲り受けた免疫で守られていますが、この免疫は数週間で徐々に減少するため、早い段階からのワクチン接種が重要です。
ワクチン接種のスケジュール
優良ブリーダーは、子犬お迎え前の生後6~8週頃に1回目のワクチン接種を行います。その後は、お迎えまで3~4週間おきに追加接種を実施し、初年度に計3回の接種を行うのが一般的です。
- 1回目の接種(生後6~8週頃):この段階で初めてワクチンを接種し、基本的な感染症に対する免疫が付与されます。
- 2回目の接種(生後10~12週頃):1回目で獲得した免疫を強化し、追加の病原体にも対応するために接種。
- 3回目の接種(生後14~16週頃):最後の追加接種により免疫が強化され、病気への抵抗力が向上します。
その後、年1回の追加接種が推奨され、ワンちゃんの健康状態を維持するための免疫を保つよう管理されます。
混合ワクチンと個別ワクチン
混合ワクチンには複数の病気に対する予防効果が含まれており、接種回数を減らしつつも広範な感染症対策が可能です。優良ブリーダーは、ワンちゃんの生活環境や健康状態に応じて必要なワクチンの種類や組み合わせを適切に判断し、接種しています。代表的な混合ワクチンには以下のようなものがあります:
- 5種混合ワクチン:ジステンパー、パルボウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザ、レプトスピラ症などに対応
- 7種混合ワクチン:上記の病気に加え、さらに追加の感染症対策が含まれる
- 個別ワクチン:狂犬病ワクチンなど、特定の病気に特化したワクチンも環境や地域のリスクに応じて接種
営利優先ブリーダーのずさんな健康管理
営利優先ブリーダーは、コスト削減や効率性を最優先とし、ワンちゃんの健康管理に十分な注意を払わないケースが多く見受けられます。これにより、ワンちゃんが適切なケアを受けられず、健康リスクを抱えた状態で新しい家庭に引き渡されることが多いです。具体的な問題点を挙げ、飼い主やワンちゃんが抱えるリスクを解説します。
1. 日々の健康チェックの不足
営利優先ブリーダーは、日常的な健康チェックを怠ることが多く、ワンちゃんの体調や小さな異常を見過ごしがちです。健康チェックにかかる時間や労力を削減するため、以下のような問題が生じます。
- からだの異常の見逃し:ワンちゃんの眼や耳、皮膚などに異常が出ていても、発見が遅れることが多く、感染症や皮膚病が進行してから初めて気づく場合があります。
- 行動の異常を放置:歩き方の違和感や、怠けたような動きが見られる場合でも、チェックを行わず放置され、後から関節疾患や筋肉の問題が発覚するケースが多いです。
- 食事管理の欠如:食欲不振や体重減少に気づかず、成長不良や栄養不足の子犬が育つこともあります。これにより、迎えたばかりの飼い主が急遽治療や栄養改善の対応を迫られることになります。
2. 定期的な健康診断の未実施
営利優先ブリーダーは、コスト削減のために定期的な健康診断を省略したり、最低限の検査しか行わないことが多くあります。この結果、以下のようなリスクが見逃され、ワンちゃんや飼い主に大きな負担がかかることがあります。
- 先天性疾患の未発見:繁殖に適した健康な親犬の選定を行わないため、遺伝的な疾患がある親犬から子犬が生まれやすくなります。パテラ(膝蓋骨脱臼)や股関節形成不全、心臓疾患など、特定の犬種に見られる先天性疾患が検出されないままの子犬は、成長後に手術や長期的な治療が必要になる場合があり、飼い主が予期せぬ高額な医療費を負担することになります。
- 感染症や寄生虫の見逃し:糞便検査や血液検査が行われないため、腸内寄生虫やフィラリアなどの内部寄生虫や、ジステンパーやパルボウイルスといった感染症が未発見のまま、新しい家庭に引き渡されるリスクがあります。こうした病気は早期発見・治療が重要であり、見逃されると飼い主に大きな負担がかかるだけでなく、ワンちゃんの健康にも深刻な影響を及ぼします。
3. 駆虫対策の不十分さ
営利優先ブリーダーは、寄生虫の駆除を徹底しないため、ワンちゃんがノミやダニ、フィラリア、回虫などの寄生虫に感染するリスクが高くなります。
- 外部寄生虫の駆除不足:ノミやマダニによる皮膚トラブルやアレルギーが発生しても、対策が行われず、放置されることが多く見受けられます。
- 内部寄生虫の感染リスク:フィラリアや回虫などの内部寄生虫が見逃され、飼い主のもとで発症するケースが多く、感染が進行するとワンちゃんの体調が深刻な影響を受け、治療に長期間と高額な費用が必要になります。
4. ワクチン接種の省略や不十分な管理
営利優先ブリーダーは、ワクチン接種にかかる費用を抑えるために、必要なワクチン接種を省略することが多く、ワンちゃんが十分な免疫を獲得できていない状態で引き渡されることがあります。
- ワクチンスケジュールの省略:生後6~8週頃に始めるべきワクチン接種が行われない、または追加接種が不十分なまま引き渡されることがあり、感染症への抵抗力が低下します。
- 混合ワクチンの未接種:複数の病気を予防する混合ワクチンが適切に接種されていないため、ジステンパーやパルボウイルスなど命に関わる感染症のリスクが高まります。
まとめ
ワンちゃんを家族として迎えるには、健康管理が行き届いた優良ブリーダーを選ぶことが重要です。優良ブリーダーは、日々の健康チェック、定期的な健康診断、寄生虫対策、そしてワクチン接種の徹底によって、ワンちゃんの健康を守り、飼い主にとっても安心の環境を提供しています。
一方で、営利優先ブリーダーは健康管理に必要なケアを省略しがちで、先天性疾患や感染症のリスクが高く、飼い主の負担が増えることが多くなります。
BreederFamiliesでは、こうした厳格な健康管理を行っているかについても評価しています。大切なワンちゃんを健やかに育てるため、信頼できる優良ブリーダーを見分けるポイントとして、この記事が参考になれば幸いです。