子犬を迎える前に知っておきたい!ワンちゃんのワクチン接種の基礎知識

子犬のワクチン

ワクチン接種は、ワンちゃんを命に関わる感染症から守るだけでなく、飼い主や社会全体の安全を確保するためにも欠かせない重要な予防策です。特に、子犬をブリーダーから迎える際には、狂犬病ワクチンや混合ワクチンの接種状況を確認し、適切なスケジュールを立てることが大切です。

この記事では、ワクチンの目的や種類、接種スケジュールをはじめ、混合ワクチンの選び方や費用、接種後のリスクについて詳しく解説します。信頼できるブリーダーのワクチン対応についても触れながら、飼い主として知っておきたい基礎知識を網羅しています。
ワンちゃんが健康で安心な生活をスタートできるよう、この記事をぜひ参考にしてください。

 

犬のワクチンとは?いつどのタイミングで打つべき?

タイミング

ワンちゃんの健康を守るためには、義務である狂犬病ワクチンと、任意で選ぶ混合ワクチンの接種が欠かせません。本章では、それぞれのワクチンの特徴や役割、接種スケジュールについて詳しく解説します。飼い主が知っておくべき基本を押さえて、ワクチン対応を計画的に進めましょう。

犬のワクチンとは?

ワンちゃんの健康を守るために、ワクチン接種は欠かせない重要な予防策です。ワクチンには以下の2種類があります。

  • 義務ワクチン:法律で接種が義務付けられている狂犬病ワクチン
  • 任意ワクチン:混合ワクチンや単体ワクチンなど、飼い主がワンちゃんの生活環境やリスクに応じて選ぶもの
    これらは病気の予防だけでなく、他の動物や人への感染拡大を防ぐ役割も担っています。

狂犬病ワクチン|義務ワクチンの接種タイミング

狂犬病ワクチンは、法律で接種が義務付けられた重要なワクチンです。狂犬病は人獣共通感染症であり、致死率が非常に高い疾患です。日本では予防接種が徹底されているため、現在は国内での発生はありませんが、海外では依然として多くの感染例があります。

  • 初回接種:生後91日齢以降に1回目を接種することが法律で義務付けられています。お迎え時期が生後60日齢前後であるため、狂犬病ワクチンはほとんどの場合、お迎え後に接種する必要があります。
  • 追加接種:その後、年1回の追加接種が必要です。定期的な接種により、ワンちゃんの健康を守りつつ、法律遵守を徹底しましょう。

ブリーダーから子犬をお迎えする際、お迎え時期が生後60日齢前後であれば未接種が一般的ですが、生後91日齢を過ぎている場合には接種済みであることが望ましいです。接種証明書を確認のうえ、未接種の場合はお迎え後に動物病院でスケジュールを立てましょう。

混合ワクチン|任意ワクチンの接種タイミング

混合ワクチンは、生活環境やライフスタイルに合わせて選択する任意のワクチンです。特に、子犬期には感染症のリスクを抑えるため、初年度に複数回の接種が推奨されます。

  • 初回接種:生後6~8週齢の間に1回目の接種を行うのが一般的です。ほとんどのブリーダーでは、子犬を新しい家族に引き渡す前に1回目の接種を完了しています。
  • 2回目:初回接種後、3~4週間以内に接種。
  • 3回目:2回目接種後、さらに3~4週間以内に接種。

優良ブリーダーは、子犬が新しい家族に引き渡される前に必ず1回目の混合ワクチンを接種しています。 これは、移行抗体が減少し始める時期に感染症から子犬を守るための基本的な対応です。よって、お迎え時にはワクチン接種証明書を必ず確認しましょう。証明書には接種日、ワクチンの種類、接種内容が記載されているため、2回目以降の接種スケジュールを計画する際に役立ちます。

なお、ワクチンの効果は永続的ではないため、2年目以降も定期的な接種が必要です。これは免疫が弱まるのを防ぎ、感染リスクを低下させるためです。混合ワクチンは感染リスクが続く限り、毎年の接種が推奨されます。外出頻度や他の犬との接触が多いワンちゃんは特に重要です。

 

混合ワクチンが必要な理由|ワンちゃんを感染症から守る4つのポイント

抗体

混合ワクチンは、ワンちゃんが感染症から守られるためだけでなく、飼い主や社会全体に安心をもたらす重要な役割を果たします。特に、子犬期は免疫システムが未熟なため、移行抗体が減少するタイミングで計画的にワクチンを接種し、新たな抗体を作ることが欠かせません。以下に、任意ワクチンが重要な理由を4つに整理して解説します。

1. 移行抗体の減少を補うため

子犬は母犬から母乳を通じて受け継いだ移行抗体によって感染症から守られています。しかし、この抗体は生後6~8週を境に減少し始め、感染症のリスクが高まります。ワクチン接種を行うことで、新たな抗体を作り、感染症に対する免疫を補強する必要があります。

2. 感染症の予防と重症化の回避

ワクチンは、ワンちゃんが特定の感染症にかからないよう予防するだけでなく、万が一感染した場合でも重症化を防ぐ効果があります。例えば、パルボウイルスやジステンパーなど、命に関わる重大な病気からワンちゃんを守るためには、ワクチンによる免疫の獲得が必須です。

3. 環境やライフスタイルに応じた感染リスクの軽減

ワンちゃんの生活環境や活動範囲によって、感染リスクは大きく異なります。散歩や他の犬との接触が多い場合は、感染症のリスクが高くなるため、混合ワクチンで広範囲の病気を予防することが重要です。一方、屋内飼育であっても、多頭飼育の場合は家庭内での感染拡大を防ぐための接種が求められます。

4. 公共の安全と家族全体の安心のため

任意ワクチンは、ワンちゃん自身を守るだけでなく、家族や社会の安全にも寄与します。例えば、人獣共通感染症であるレプトスピラ症は、人間にも健康被害を与える可能性があります。適切なワクチン接種を行うことで、家族全員が安心して過ごせる環境を整えることができます。また、公共の場やペット同伴施設を利用する際にも、ワクチン接種が条件となる場合があるため、接種の実施は飼い主の責任でもあります。

 

混合ワクチンの種類と目的|コアワクチンとノンコアワクチンの違い

ワクチン

混合ワクチンは、ワンちゃんを命に関わる感染症から守るために不可欠です。これらのワクチンは、すべてのワンちゃんに必要な「コアワクチン」と、生活環境や地域のリスクに応じて接種が検討される「ノンコアワクチン」に分類されます。

コアワクチン

コアワクチンは、犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬アデノウイルス(1型と2型)のような、命に直結する重篤な病気を予防するために、すべてのワンちゃんに必須とされるワクチンです。これらの病気は感染力が非常に高く、一部は人にも感染する「人畜共通感染症」として知られています。

世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインでは、コアワクチンは通常3年に1回の接種が推奨されています。しかし、日本では一般的に1年に1回接種することが多く、これは獣医師や地域の感染状況による判断が含まれています。

対象となるウイルス:

  • 犬ジステンパーウイルス (CDV):高い致死率を持ち、呼吸器、消化器、神経系に深刻な影響を及ぼします。
  • 犬アデノウイルス1型 (CAV-1):犬伝染性肝炎の原因となり、肝臓に大きなダメージを与える病気です。
  • 犬アデノウイルス2型 (CAV-2):呼吸器感染症(ケネルコフ)を引き起こします。
  • 犬パルボウイルス (CPV):特に子犬に致命的な急性下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こします。

ノンコアワクチン

ノンコアワクチンは、ワンちゃんの生活環境やライフスタイルに応じて接種を検討するワクチンです。予防対象は、犬パラインフルエンザウイルス、犬コロナウイルス、レプトスピラ症などで、これらの疾患は地域や飼育環境によって感染リスクが異なります。例えば、多頭飼育や頻繁な外出、自然環境での活動が多いワンちゃんは、これらの病気に感染する可能性が高くなるため、ノンコアワクチンの接種が推奨されます。

ノンコアワクチンは主に不活化ワクチンが使用されることが多く、体への負担が少ないとされていますが、効果の持続期間が短いため、1年に1回の接種が推奨されています。

対象となるウイルス:

  • 犬パラインフルエンザウイルス (CPiV):気道感染症を引き起こし、多頭飼育環境での感染リスクが高い病気です。
  • 犬コロナウイルス (CCoV):軽度の下痢や嘔吐を伴う消化器疾患の原因となります。
  • レプトスピラ症:人畜共通感染症で、腎臓や肝臓にダメージを与える重篤な病気です。水辺や湿地帯での活動が多い場合に特に注意が必要です。

 

混合ワクチンのカバー範囲|5種・6種・8種・10種の違いと選び方

ワクチン接種

混合ワクチンは、ワンちゃんを複数の感染症から守るための基本的な予防策です。2種や3種のワクチンも存在しますが、これらは予防対象が限られるため、現在の日本では一般的ではありません。すべてのワンちゃんに推奨される5種以上の混合ワクチンを中心に解説します。

【混合ワクチンの種類と対象ウイルス】
ワクチン種別カバー範囲
△ワクチン種別カバー範囲

 

5種~6種ワクチン(コアワクチン中心)

室内飼育が中心のワンちゃんや、感染源との接触が少ない環境に適しています。これらのワクチンは最低限必要な感染症をカバーし、命に関わる病気を予防します。

  • 5種ワクチン:犬ジステンパー、犬パルボウイルス、犬アデノウイルスを中心にカバーします。特に、ワンちゃんが他の犬との接触が少ない場合には十分な効果を発揮します。
  • 6種ワクチン:5種ワクチンに犬コロナウイルス (CCoV) が追加され、多頭飼育環境や一部外出がある場合に適しています。犬コロナウイルスによる消化器疾患のリスクを軽減します。

8種~10種ワクチン(ノンコアワクチンを含む)

外出や他の犬との接触が多いワンちゃん、散歩や旅行、自然環境に触れる機会がある場合に推奨されます。ノンコアワクチンを含むため、地域やライフスタイルに応じたリスクをカバーします。

  • 8種ワクチン:6種ワクチンにレプトスピラ(特定型)が追加され、散歩や他の犬との接触が多い場合に効果的です。特に、感染リスクが高い水辺や湿地帯に出かける際に推奨されます。
  • 10種ワクチンの目的:8種ワクチンにレプトスピラ(追加型)を含むことで、さらに広範囲の感染リスクをカバーします。山や海などの自然環境に触れる頻度が高いワンちゃんに最適です。

 

ワクチン接種にかかる費用|種類別の目安

ワクチン費用

ワクチン接種はワンちゃんの健康を守るために欠かせない取り組みですが、費用面も考慮する必要があります。混合ワクチンと狂犬病ワクチンの費用に加え、ブリーダーから迎える場合の注意点や初年度の合計費用について解説します。

混合ワクチンの費用

混合ワクチンは種類に応じて費用が異なり、以下のような価格帯が一般的です(1回分の料金の目安):

  • 5種ワクチン:5,000~7,000円
  • 6種ワクチン:6,000~8,000円
  • 8種ワクチン:6,000~9,000円
  • 10種ワクチン:8,000~12,000円

接種回数や病院による差もあるため、事前に獣医師に確認することをお勧めします。

狂犬病ワクチンの費用

狂犬病ワクチンは、3,000~5,000円が目安です。

狂犬病ワクチン接種後には、接種証明書を取得し、自治体での登録が必要です。

初年度の費用とお迎え時の確認ポイント

初年度のワクチン接種費用には、混合ワクチンと狂犬病ワクチン、さらに自治体登録費用が含まれます。混合ワクチンは6種の場合で18,000~24,000円(1回あたり6,000~8,000円 × 3回)が目安で、狂犬病ワクチンは3,000~5,000円、自治体登録費用は約3,000円かかります。これらを合計すると、初年度の費用は24,000~32,000円程度になるでしょう。

特にブリーダーから子犬を迎える場合、1回目の混合ワクチン接種費用が生体価格に含まれているケースが多いですが、含まれていない場合もあるため、事前に確認しておくことが大切です。また、接種証明書を受け取り、次回のスケジュールに役立てることで、計画的な接種が進めやすくなります。

 

ワクチン接種のリスクと注意点|副反応への対処法と観察ポイント

ワクチンのリスク

ワクチン接種は、ワンちゃんの健康を守るための重要な予防策ですが、稀に副反応が起こる場合があります。ここでは、よくある軽度の反応から、稀に見られる重篤な副反応まで、具体的に解説します。接種後の注意点も含めて、飼い主として知っておくべき情報を確認しましょう。

1. 軽度の副反応

ワクチン接種後、以下のような軽い反応が見られることがあります。これらは一般的で、一時的なものであることがほとんどです。

  • 接種部位の腫れや痛み:接種した箇所が腫れたり、触ると嫌がるような反応を示す場合があります。通常は1~2日で収まりますが、腫れが大きくなる場合は獣医師に相談してください。
  • 一時的な倦怠感や元気の低下:ワクチン接種後、ワンちゃんが少しぐったりしたり、食欲が低下することがあります。これは免疫反応が起こっているためで、通常は1~2日以内に回復します。
  • 軽度の発熱:接種後に微熱が出ることがありますが、体温が高くなりすぎたり元気がない場合は、注意が必要です。

2. 中程度の副反応

軽度よりはやや強い反応が見られることがありますが、適切なケアをすれば回復可能です。

  • じんましんや皮膚のかゆみ:ワクチンに対するアレルギー反応として、皮膚にかゆみや赤い発疹が現れる場合があります。この場合、動物病院で抗アレルギー薬の処方を受けることで改善します。
  • 嘔吐や下痢:消化器系の異常として一時的な嘔吐や下痢が発生する場合があります。水分補給を心がけつつ、症状が長引く場合は獣医師に相談してください。

3. 重篤な副反応(まれ)

非常に稀ではありますが、重篤なアレルギー反応が発生する可能性があります。このような場合、早急な対応が必要です。

  • アナフィラキシーショック:接種後数分から数時間以内に急性のアレルギー反応が起こることがあります。症状として以下が見られる場合は、至急動物病院へ連絡してください
    • 呼吸困難
    • 舌や顔の腫れ
    • ぐったりして動けなくなる
  • 免疫関連疾患の誘発:非常にまれに、ワクチンが自己免疫疾患を引き起こす可能性があります。この場合、獣医師と継続的な治療計画が必要です。
     

接種後の観察と注意点

ワクチン接種後は、ワンちゃんをしっかり観察することが重要です。以下のポイントを押さえておきましょう:

  • 接種後30分間は動物病院内または近くで待機:重篤な副反応が起きた場合、すぐに対応できるようにするためです。
  • 帰宅後も様子をチェック:ワクチン接種後24時間以内は、ワンちゃんの元気や食欲、接種部位の腫れなどを観察しましょう。
  • 異常があればすぐに連絡:気になる症状が見られた場合は、放置せずに獣医師へ相談してください。

 

まとめ

ワクチン接種は、ワンちゃんを感染症から守るために欠かせない重要な予防策です。特に、子犬をブリーダーから迎える際には、ワクチン接種の状況を確認し、次回のスケジュールを立てることが必要です。狂犬病ワクチンは法的義務として、混合ワクチンはワンちゃんのライフスタイルや環境に応じた感染症予防として、それぞれ大きな役割を果たします。

信頼できるブリーダーは、引き渡し前に必要なワクチン接種を行い、接種証明書を提供してくれるため、飼い主はその内容を確認して次の接種計画を進めることが求められます。

費用や接種後のリスクも含めて正しく理解し、計画的な接種を行うことで、ワンちゃんとの生活を安心してスタートさせましょう。

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