子犬の適正な値段とは?子犬の価格の裏側を徹底分析

価格

子犬をお迎えするとき、価格の違いに戸惑ったことはありませんか?
「少しでも安く迎えたい」と思うのは自然なことですが、ワンちゃんは工業製品ではなく生き物です。コストを単純に削減することはできず、適正価格を大きく下回る子犬は、健康やしつけの面でトラブルを抱えるリスクが高まります。

では、なぜ子犬の価格にはこれほどの差があるのでしょうか?
それは単なる利益の違いではなく、ワンちゃんを育てる環境やかけられた手間が価格に大きく影響しているからです。

本記事では、ブリーダーが子犬の育成にかけるコストの内訳を明らかにし、優良ブリーダーと普通のブリーダーの違い、そして適正な価格でワンちゃんを迎えるためのポイントを詳しく解説します。

「ペットショップやブリーダーサイトで安く販売されている子犬は大丈夫?」と気になっている方も、ぜひ最後までご覧ください。

 

同じ子犬なのにこんなに違う?優良ブリーダーと普通のブリーダーの価格差とは

衝撃

子犬の販売価格は、単に子犬が産まれてからの費用だけで決まるわけではありません。母犬の出産費用、親犬の健康管理費、人件費、犬舎の維持費など、多くのコストが含まれています。さらに、引退した親犬をどう扱うかも、ブリーダーの姿勢によって異なります。

子犬の価格には、親犬や引退犬のケアを含め、どれだけ愛情と手間をかけて育てられているかが反映されます。もちろん、中には不当に高い価格を設定するブリーダーや、成長によって価格が下がるケースもありますが、費用感を理解することは重要です。

優良ブリーダーは、ワンちゃんの健康と社会性を重視し、親犬の血統や食事、医療ケア、育成環境に細心の注意を払います。一方、普通のブリーダーは、法律で定められた最低限の基準を守りつつ、コストを抑えた飼育を行うため、必要最低限の管理しかされていないことが一般的です。

その結果、我々の試算では子犬1頭あたりの費用には以下のような差が生じました。

  • 優良ブリーダー:約40万円
  • 普通のブリーダー:約16万円

これは2倍以上の差に相当します。
そして、16万円を下回る価格の子犬は、十分なコストがかけられていない可能性が高いことも分かると思います。

次の章では、この価格差がどのように生じるのか、具体的な費用の内訳や、優良ブリーダーと普通のブリーダーで特に差が出るポイントについて詳しく解説していきます。

 

どんな費用がかかってくるのか?

コスト

子犬を販売するまでには、さまざまな費用が発生します。これらの費用は、単に子犬が生まれてからの飼育費だけでなく、親犬の管理費や出産費用、犬舎の運営費など、多岐にわたります。大きく分けると、以下の5つの費用カテゴリーが存在します。

 
①共通コスト(犬舎全体の運営費)

犬舎を維持し、すべてのワンちゃんを適切に飼育するために必要な費用です。これらの多くは親犬や子犬の頭数に関係なく発生します。

  • 人件費:ブリーダーやスタッフの給与、社会保険料
  • 水道光熱費:犬舎の温度・湿度管理、清掃、照明のための電気・水道費
  • 消耗品費:トイレシート、消毒液、掃除用品などの衛生管理費
  • 設備費:ケージや犬舎のメンテナンス費、修繕費(今回の試算ではケージ費のみ)

これらのコストは、犬舎を適切に運営するために不可欠であり、一定額が継続的に発生します。

②引退犬飼育コスト

繁殖を終えた親犬の飼育にかかる費用です。引退犬の扱いによって、このコストが発生する場合としない場合があります。

  • 食費:年齢に応じたフードやサプリメント代
  • 健康管理費:健康診断、ワクチン接種、フィラリア予防、寄生虫駆除
  • 医療費:老犬になった際の治療費(今回は試算に含めず)

引退犬の数が多いほど、ブリーダーの年間総コストも増加します。

 
③親犬飼育コスト

親犬の健康管理や繁殖にかかる費用です。親犬の飼育には、繁殖を行う期間(約6年間)の食費や医療費、登録関連費などが含まれます。

  • 食費:繁殖期の栄養管理を考慮したフードやサプリメント
  • 健康管理費:定期健康診断、ワクチン接種、寄生虫予防
  • 遺伝子検査費:遺伝性疾患のスクリーニングのための検査
  • 登録関連費:血統書の登録やマイクロチップの装着費用

親犬の健康状態を維持することは、健康な子犬を誕生させるために必要不可欠な要素です。

④出産関連コスト

母犬の健康管理や交配、出産にかかる費用です。出産が安全に行われるよう、妊娠前後のケアが含まれます。

  • 母犬の健康診断:交配前、妊娠中、出産直前の健康チェック
  • 交配料:他犬舎の父犬との交配にかかる費用
  • 帝王切開費用:必要に応じて実施する手術費用。小型犬では帝王切開の割合が高く、緊急手術が必要になるケースもあります。

 
⑤子犬飼育コスト

子犬は生まれてから約60日間、ブリーダーのもとで育てられます。その間の食費や健康管理費、ワクチン接種費用などが含まれます。

  • 食費:離乳食やミルク、高品質なフード
  • 健康管理費:健康診断、ワクチン接種、寄生虫予防
  • マイクロチップ装着費:子犬の身元管理のための義務化対応

子犬の成長に適した栄養管理や健康管理が求められるため、一定の費用が発生します。

 

子犬の価格はどう決まる?費用計算の仕組み

ロジック

子犬1頭あたりのコストは、共通コストや親犬の飼育コスト、出産コスト、子犬の飼育コストを考慮しながら、3つのステップを経て計算されます。

Step1:①共通コストと②引退犬飼育コストを各親犬に配分し、③親犬飼育コストと合算する

まず、すべてのワンちゃんに共通して発生する①共通コストと、引退した親犬の食費や健康管理費である②引退犬飼育コストを算出します。

これらの費用について親犬が引退するまでの6年間の総額を求め、それを各親犬に均等に割り振ることで配分します。

 

Step2:Step1のコストを、各出産に配分し、④出産関連コストと合算する

Step1で均等に配分されたコストを、親犬の生涯で予定される出産回数に応じて各出産費用に均等に配分します。

さらに、ここに④出産関連コストを加算します。これらの要素を加算することで、1回の出産にかかるトータルコストが導き出されます。

 

Step3:Step2のコストを各子犬に配分し、⑤子犬飼育コストと合算する

Step2で算出されたコストを、1回の出産で誕生する子犬の頭数で分割します。一般的に1回の出産で産まれる子犬の数は2~3頭程度であり、これを考慮して費用を均等に分配します。

さらに、ここに⑤子犬飼育コストを加えます。

このようにして、子犬1頭あたりの価格が算出されます。価格が単に「高い・安い」ではなく、それぞれの過程でどのようなコストが発生しているのかを理解することで、適正価格でワンちゃんを迎えることの重要性が見えてくるでしょう。

 

優良ブリーダーと普通のブリーダーで異なる大前提

前提

前章の通り、子犬を販売するまでの過程で様々な費用がかかってきますが、その費用をどのように配分するかの前提も重要なポイントです。

優良ブリーダーと普通のブリーダーでは、引退犬1人あたりの飼育頭数生涯出産回数などの考え方に違いがあり、それが結果として子犬1頭あたりの価格差に影響を与えます。

(1)引退犬を飼育しているかどうか

引退犬の扱いは、ブリーダーの方針によって大きく異なります。繁殖を終えた親犬をどうするかは、ブリーダーの経営方針だけでなく、ワンちゃんへの考え方を反映する重要なポイントです。

  • 普通のブリーダー:引退犬0頭
    引退犬をコストとして考え、できるだけ早く手放すのが一般的です。法令の基準まで出産した親犬について、里親へ譲渡する、または引き取り業者へ渡すケースが多く見られます。今回の試算では、普通のブリーダーの引退犬は0頭としています。
  • 優良ブリーダーの場合:引退犬5頭
    引退犬も家族の一員として考え、簡単には手放しません。親犬が繁殖を終えた後も、信頼できる里親や知人を慎重に探すか、自ら終生飼育するケースが多いです。そのため、親犬が増えるほど、飼育費や健康管理費が発生します。今回の試算では、引退犬を一部終生飼育する前提で、5頭としています。 

(2)1人あたりの親犬の飼育頭数

ブリーダーの運営形態によって、1人あたりが担当する親犬の頭数が異なります。これは、人件費や経費の配分に影響を与えるため、子犬1頭あたりのコストにも大きく関係します。

  • 普通のブリーダー:親犬15頭/人
    1人あたりの親犬の数をできるだけ増やし、犬舎の運営コストを分散させることで、1頭あたりのコストを抑えています。しかし、1人あたりの負担が増えることで、ワンちゃん1頭ずつにかけられる時間やケアの質が低下する可能性もあります。日本の法令では、1人あたりの繁殖犬の上限は15頭と定められており、普通のブリーダーはこの上限まで飼育するケースが多いです。今回の試算では、普通のブリーダーは15頭/人としています。
  • 優良ブリーダー:親犬10頭/人
    親犬の健康や飼育環境に配慮し、1頭1頭にしっかり手をかけるため、1人あたりの飼育頭数を制限する傾向があります。親犬の数を抑えることで、1頭あたりのケアの質が向上し、健康管理や社会化がより丁寧に行われます。しかし、その分1頭あたりの管理コストは高くなります。今回の試算では、優良ブリーダーは10頭/人としています。

(3)親犬の生涯出産回数

親犬の生涯における出産回数は、母犬の負担や健康状態、子犬の品質に影響を与えます。出産回数が多くなれば、その分1回あたりの出産コストは下がりますが、母犬への負担が大きくなり、子犬の健康リスクも高まります。

  • 普通のブリーダー:生涯出産回数6回
    法律で定められた最大回数である6回まで繁殖させることが一般的です。出産回数が多いほど、1回あたりの出産コストは分散され、子犬1頭あたりの費用が抑えられます。ただし、健康管理の観点では、母犬の負担が大きくなりすぎるリスクもあります。今回の試算では、普通のブリーダーの親犬は6回の出産を前提としています。
  • 優良ブリーダー:生涯出産回数4回
    母犬の健康や出産の適性を考慮し、出産回数を抑えるケースが多いです。健康な母犬であれば6回出産させることもありますが、母犬の体調や出産適性を考え、2〜3回で引退するケースもあります。また、ブリーダーによっては生涯の出産回数を4回以下に制限する方針を持つところもあります。今回の試算では、優良ブリーダーの親犬は4回の出産を前提としています。

 

Step1:親犬に配分・合算されるコストについて

ここでは、共通コストと引退犬コスト、親犬飼育コスト、それらを配布・合算したコストについて、詳細な金額を含めながら解説します。

①共通コスト

共通コスト

共通コストとは、犬舎の運営を維持するために必要な費用であり、親犬や子犬の頭数に関係なく発生する固定費です。

優良ブリーダーでは年間約340万円、普通のブリーダーでは年間約290万円となります。どちらも非常に高額な費用がかかりますが、その差は年間50万円にもなります。

この共通コストの主な内訳は以下の通りです。

  • 人件費(優良・普通のブリーダーともに約216万円)
    ブリーダー自身やスタッフの給与、社会保険料などが含まれます。試算では、月18万円 × 1人 × 12か月 = 年間216万円で、これは優良ブリーダーと普通のブリーダーで差はありません。
  • 水道光熱費(優良ブリーダー:約60万円 / 普通のブリーダー:約36万円)
    ワンちゃんの飼育環境を快適に維持するために、適切な温度・湿度管理が必要となります。特に、夏場の冷房や冬場の暖房には多額の費用がかかります。優良ブリーダーはこの点に特に配慮しており、年間60万円(5万円/月)を想定。一方、普通のブリーダーはこの部分をある程度抑えており、年間36万円(3万円/月)と試算しました。
    消耗品費(優良ブリーダー:約60万円 / 普通のブリーダー:約36万円)
    トイレシートや消毒液などの衛生管理用品が含まれます。優良ブリーダーは、衛生面を配慮し清掃を頻繁に行うため、このコストが増加します。試算では、年間60万円(5万円/月)、普通のブリーダーでは年間36万円(3万円/月)程度としました。
  • ケージ費(優良・普通のブリーダーともに約3万円)
    親犬と子犬の居住スペースを確保するための設備も必要です。優良ブリーダーと普通のブリーダーでは必要なケージの数や値段は変わらず、12万円のケージを20個程度のケージを使用、ケージの減価償却を8年で、年間約3万円と試算しました。

②引退犬飼育コスト

引退犬コスト

前章の通り普通のブリーダーは引退犬をすぐに手放すため、このコストは基本的に0円と想定されます。一方、優良ブリーダーは5頭の引退犬がいるため、費用がかかってきます。1頭あたりの年間飼育コストは約10万円となり、試算では5頭を終生飼育する前提で計算するため、年間で約50万円のコストがかかることになります。これが、引退犬のケアをするかしないかによる大きなコストの違いとなります。

引退犬の主なコストは以下の通りです。

  • 食費:引退犬の健康維持のための食事代。1頭あたり年間約7.4万円と試算しました。
  • 健康管理費:健康診断、ワクチン接種、フィラリア予防、寄生虫駆除などにかかる費用。1頭あたり年間2.7万円としました。

さらに、試算には含めていませんが、病気になれば医療費が追加で発生する可能性があります。
高齢犬になるほど、心臓病や関節疾患などのリスクが高まるため、病気や治療費の負担も想定しておく必要があるのです。

③親犬飼育コスト

親犬飼育コスト

親犬を健康に育てることは、健康な子犬を産ませるために非常に重要です。そのため、親犬の食事や医療ケアには一定のコストがかかります。この費用は、親犬が繁殖を終えるまでの6年間の総額で考えます。

優良ブリーダーの親犬1頭あたり6年間の総コストは約66万円、普通のブリーダーでは約32万円と、約34万円の差が生じます。

  • 食費(優良ブリーダー:約48万円 / 普通のブリーダー:約15万円)
    親犬の健康維持のための食事代。優良ブリーダーは、高品質なドッグフードを与え、必要に応じて缶詰やサプリメントを追加します。そのため、1頭あたり年間約8万円、6年間で約48万円の食費がかかると試算しました。一方、普通のブリーダーでは、一般的なドッグフードを最低限の量のみ与えるため、年間約2.6万円、6年間で約15万円程度と試算しました。
  • 健康管理費(優良・普通のブリーダーともに約16万円)
    親犬の定期健康診断、ワクチン接種、フィラリア予防、寄生虫駆除などの費用。ここは、優良ブリーダーと普通のブリーダーの差はなく、1頭あたり年間約2.7万円、6年間で約15万円と試算しました。
  • 遺伝子検査費(優良ブリーダー:約1万円 / 普通のブリーダー:0円)
    親犬が遺伝性疾患を持っていないかを確認するための費用で、優良ブリーダーは一般的に遺伝子検査を行っていることが多いです。これは親犬1頭につき1回の検査を行うため、1頭あたり約1万円(5000円×2項目)と試算しました。一方で、普通のブリーダーは実施しないと仮定し、0円としました。
  • 血統書・マイクロチップ登録費用(優良・普通のブリーダーともに約8千円)
    親犬の血統を管理するための費用が発生します。これは単発の費用で1頭あたり約8,000円程度です。

なお、今回は試算に入れていませんが、血統にこだわるブリーダーは、質の向上のために親犬をドッグショーに参加させているため、その分のコストも上乗せされます。チャンピオン血統の子犬が高くなるのは、その分のコストがかかっていることも要因の一つです。

各親犬に配分して合算

親犬配分コスト

Step1の通り、①共通コスト+②引退犬飼育コスト6年分を各親犬に均等に配分し、③親犬飼育コストを合算すると、親犬1頭への配分・合算コストは、優良ブリーダーで約300万円、普通のブリーダーで約150万円となり、倍の金額の差が発生します。

これは、個々のコストの違いに加え、1人あたりの親犬の頭数の影響も大きく関係しています。普通のブリーダーは法令上限の15頭/人まで飼育し、コストを分散させる一方、優良ブリーダーは10頭/人程度に抑えているため、1頭あたりにかかるコストが相対的に高くなります。

 

Step2:出産に配布・合算されるコストについて

子犬を誕生させるためには、親犬の健康管理や出産準備、交配にかかるさまざまな費用が発生します。特に出産は母犬にとって大きな負担となるため、適切な管理を行うには相応のコストが必要になります。このセクションでは、1回の出産にかかる費用とStep1で計算したコストを配分・合算した結果を解説します。

④出産関連コスト

出産関連コスト

出産にかかる費用は、母犬の健康管理や交配料、帝王切開の費用など、さまざまな要素で構成されます。優良ブリーダーでは1回の出産あたり約16万円、普通のブリーダーでは約11万円と試算し、その差は5万円となります。

これは、出産前後の健康診断や交配にかける費用の違いが大きく影響しています。

  • 母犬の健康診断(優良ブリーダー:約3万円 / 普通のブリーダー:約1万円)
    母犬の健康状態を把握し、無事に出産できるようにするためには、出産前後の健康診断が欠かせません。特に優良ブリーダーは、交配前、妊娠中、出産直前の複数回にわたって健康診断を行い、かつ健康診断の内容もホルモン検査や血液検査等多岐にわたります。これらを踏まえ、優良ブリーダーの出産時の健康診断費用は約3万円と試算しました。一方、普通のブリーダーでは健康診断の回数を減らし、簡易な検査のみで済ませることが多く、費用は約1万円と試算しました。
  • 交配料(優良ブリーダー:約8万円 / 普通のブリーダー:約5万円)
    母犬が健康な子犬を産むためには、適切な父犬との交配が必要になります。多くのブリーダーでは、他犬舎のワンちゃんと交配させることが一般的で、その際に交配料が発生します。特に、血統の良い犬との交配では、交配料が高額になることがあります。優良ブリーダーでは、血統の優れた父犬との交配を行うため、1回あたりの交配料は約8万円と試算しました(10万円を超えることもよくあります)。普通のブリーダーでは、コストを抑えるために交配の選択肢が限られるため、交配料は約5万円と試算しました。
  • 帝王切開(優良・普通のブリーダーともに約5万円)
    小型犬では、自然分娩が難しい場合があり、帝王切開による出産が必要となるケースが少なくありません。特にチワワやフレンチブルドッグなど、骨盤の狭い犬種では帝王切開の割合が高くなります。帝王切開は計画的に行われる場合と、緊急手術が必要になる場合があり、緊急時には費用が20〜30万円と高額になることもあります。今回は、優良ブリーダーと普通のブリーダーの差があまりない項目として、平均5万円の帝王切開費用を想定しています。

Step1の親犬1頭あたりの配分・合算コストを各出産に配分して合算

出産配分コスト

Step1で計算したコストを各出産に均等配分し、④出産関連コストを合算すると、出産1回あたりの配分・合算コストは、優良ブリーダーで約91万円、普通のブリーダーで約36万円となります。その差は55万円にも及びます。

前章でも説明しましたが、この差が生まれる理由の一つとして、生涯出産回数の違いが挙げられます。優良ブリーダーは、1回の出産ごとにしっかりと母犬のケアを行い、無理のないペースで繁殖を続けるため、出産関連費用が高額になりがちです。一方、普通のブリーダーは、繁殖効率を重視することで、1回あたりの出産費用を抑えているケースが多いのです。

 

Step3:子犬に配分・合算される費用について

子犬が新しい家族のもとへ迎えられるまでの間、約60日間にわたり、食費や健康管理費などさまざまなコストがかかります。

この章では、子犬飼育コストとStep2で計算したコストを配分・合算した結果を解説します。

 
⑤子犬飼育コスト

子犬飼育コスト

今回の試算では、子犬1頭あたりの飼育費用は、優良ブリーダーで約3.4万円、普通のブリーダーで約2万円と試算し、1.5万円の差があります。

この差は、子犬の成長をどれだけ重視し、どのようなケアを施しているかの違いによるものです。特に、子犬の栄養管理や健康診断の頻度は、成犬になってからの健康状態に大きく影響するため、ブリーダーの考え方によってかけるコストが変わってきます。

  • 食費(優良ブリーダー 1.1万円 / 普通のブリーダー 2千円)
    子犬の成長に必要な栄養をしっかり摂取できるよう、食事の質や量が異なります。優良ブリーダーは、高品質なドッグフードに加え、栄養補助のための缶詰やサプリメントを適宜使用し、消化吸収に配慮した適量の食事を与えます。一方で、普通のブリーダーは、一般的なドッグフードを最低限の量だけ与え、追加の栄養補助はほとんど行いません。
  • 健康管理(優良ブリーダー 2.3万円 / 普通のブリーダー 1.8万円)
    子犬を健康な状態でお迎えできるよう、健康診断やワクチン接種が行われます。優良ブリーダーは、複数回の健康診断を実施し、ワクチンや寄生虫駆除などを徹底的に管理します。これに対し、普通のブリーダーは、健康診断の回数や診察内容が簡易的で、最低限にとどめられることが多いです。

Step2の出産1回あたりの配分・合算コストを各子犬に配分して合算

子犬配分コスト

Step2で計算した出産1回あたりの配分コストを各子犬に均等配分し、⑤子犬飼育コストを合算すると、子犬1頭あたりの最終的な費用は、優良ブリーダーで約40万円、普通のブリーダーで約16万円と試算されました。その差は24万円にも及びます。

これまでのご説明の通り、この大きな差は、単に個々の費用項目の違いだけでなく、親犬の飼育頭数や生涯出産回数、引退犬の扱いなど、ブリーダーの姿勢やこだわりの違いが反映された結果です。

 

適正価格のワンちゃんを迎えるべき理由

適正

子犬が誕生し、新しい家族に迎えられるまでには、さまざまなコストがかかります。
これまでの試算では、優良ブリーダーの子犬1頭あたりの総コストは約40万円、普通のブリーダーでは約16万円と大きな違いがあることがわかりました。

つまり、販売価格があまりにも安い子犬は、それに見合ったコストしかかけられておらず、健康管理や社会化の面で不十分な可能性が高いのです。

実際、ブリーダーから直接迎える場合、最低でも15万円以上、一定以上の基準を満たすブリーダーでは30万円以上が適正だと思われます。BreederFamiliesに掲載されている子犬も、基本的に25万~50万円の価格帯が多く、これは適切な育成環境を維持するためのコストが反映されているためです。

もちろん、他の仕事で収入を得ながらブリーディングして人件費を含めないケースや各種工夫で多少安くなるケースもあります。しかし、それでもそれでも優良ブリーダーから迎える場合は、少なくとも25万円以上は必要と考えるのが妥当です。

また、高い価格だからといって必ずしも良い子犬とは限らないのも事実です。価格だけで判断せず、ブリーダーの飼育環境や子犬の健康状態をしっかりチェックすることが大切です。

ペットショップや一般的なブリーダーサイトの子犬の価格は適正なのか?

ペットショップの子犬の価格の仕組み

ペットショップで販売されている子犬の価格は10~25万円程度が一般的ですが、これは販売利益や店舗運営コストが大きく上乗せされています。多くのペットショップは、ペットオークションを通じて3~12万円程度で子犬を仕入れ、2~3倍の価格で販売しています。

つまり、仕入れ価格が16万円以下であることは、普通のブリーダーが最低限かける飼育コスト(約16万円)すら下回ることを意味し、適切な健康管理や社会化トレーニングが行われていない可能性が高いのです。

ブリーダーサイトの子犬の価格の落とし穴

最近では、インターネットのブリーダーサイトにも15万円以下の子犬が増えているといわれています。どのサイトも「優良ブリーダー」と謳っているため、一見安心に思えますが、実はペットオークションやペットショップに卸しているブリーダーが掲載を増やしているケースも少なくありません。

「優良ブリーダー」と謳っているサイトでも掲載基準が曖昧なことが多く、営利目的で流行犬種を大量繁殖し、安価で販売しているケースが存在します。本当に適切な環境で育てられた子犬なのか見極めることが重要です。

価格が安すぎると何が起こるのか?

「少しでも安くワンちゃんを迎えたい」と考えるのは当然ですが、価格が安すぎる子犬には以下のようなリスクがあります。

  • お迎え後に病気が発覚し、高額な医療費がかかる:親犬の健康管理や子犬の栄養管理が不十分で、免疫力が低い可能性がある。
  • 社会化が不十分で、しつけが難しくなる :子犬の時期に適切な社会化トレーニングを受けておらず、環境ストレスに弱く、問題行動を起こしやすい。

子犬は将来をともにする大切な家族です。長期の目線で適切な判断をすることが重要です。

 

まとめ

子犬の価格には、親犬の健康管理や育成環境へのこだわりが反映されています。
試算によると、優良ブリーダーの子犬1頭あたりの総コストは約40万円、普通のブリーダーでは約16万円と大きな違いがありました。

つまり、販売価格が極端に安い子犬は、健康管理や社会化に十分なコストがかけられていない可能性が高いのです。

また、ペットショップやブリーダーサイトで販売されている子犬は、適正な価格設定がされているとは限らず、利益優先の価格設定になっている場合もあります。

そのため、価格だけで判断せず、ワンちゃんが育った環境やブリーダーの飼育方針を確認することが重要です。

BreederFamiliesでは、適正なコストをかけて育てられた健康なワンちゃんを迎えられるよう、厳選したブリーダーのみを掲載しています。価格について不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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