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遺伝疾患と遺伝子検査の基礎知識|健康なワンちゃんを迎えるために

遺伝子検査

遺伝疾患はワンちゃんの健康や生活の質に大きな影響を与えることがありますが、そのリスクは遺伝子検査によって予防・管理することが可能です。本記事では、遺伝疾患の基本的な仕組みから、遺伝子検査の役割や結果の解釈方法、さらに信頼できるブリーダーが行う遺伝子検査の実施パターンについて詳しく解説します。健康で幸せなワンちゃんを迎えるために、ぜひご参考ください。

 

遺伝疾患とは何か?

遺伝イメージ
△遺伝のイメージ

 

遺伝疾患とは、親犬から子犬に遺伝する病気のことを指します。このような病気は、遺伝情報が記録された「染色体」に含まれる遺伝子の変異によって引き起こされます。ワンちゃんの場合、染色体は父親と母親からそれぞれ1本ずつ受け継がれ、これが子犬の健康や体質を決定します。

もしこの遺伝情報の中に「変異」が含まれていると、遺伝疾患のリスクが高まります。このような遺伝疾患は、人間だけでなく、多くの動物にも見られ、特に純血種のワンちゃんではそのリスクが高くなることがあります。 

遺伝疾患の仕組み

遺伝疾患には、優性遺伝と劣性遺伝という2つの仕組みがあります。

  • 優性遺伝:優性遺伝では、父親または母親のどちらか一方から受け継いだ遺伝子に変異があるだけで疾患が発症します。例えば、もし父犬が特定の遺伝疾患の変異を持っている場合、その変異が子犬に受け継がれた時点で発症する可能性があります。
  • 劣性遺伝:劣性遺伝では、両親から引き継いだ遺伝子の両方に変異がある場合にのみ疾患が発症します。このため、片親が変異を持っていても、もう一方の親が正常な遺伝子を持っていれば、子犬は発症しません。ただし、変異を持つ遺伝子を引き継ぐ可能性はあるため、交配する場合は注意が必要です。

遺伝疾患が及ぼす影響

遺伝疾患は、ワンちゃんの健康や生活の質に大きな影響を与えます。例えば、進行性網膜萎縮症(PRA)は失明を引き起こし、変性性脊髄症(DM)は後肢の麻痺や歩行困難につながります。

これらの疾患はワンちゃん自身だけでなく、飼い主にも精神的・経済的な負担をもたらします。そのため、遺伝疾患のリスクを把握し、予防することが重要です。

 

遺伝子検査とは?

検査

遺伝子検査とは、ワンちゃんの遺伝子情報を調べ、特定の疾患に関連する変異があるかどうかを確認するための検査です。この検査により、ワンちゃんがどのような遺伝情報を持っているのかを把握でき、将来の健康リスクを予測することができます。

遺伝子検査は、繁殖を行う親犬に実施されることが一般的で、これにより繁殖時に遺伝疾患のリスクを最小限に抑えることができます。

遺伝子検査の流れ

遺伝子検査は次のような手順で行われます。

  • サンプル採取:ワンちゃんの口腔内の細胞や血液を採取します。このプロセスは痛みを伴わず、安全に行われます。
  • 遺伝子解析:採取したサンプルを専門の研究機関で解析し、遺伝子に変異があるかどうかを調べます。
  • 結果報告:検査結果は、ノーマル、キャリア、アフェクテッドのいずれかとして判定されます。

遺伝子検査の結果の理解

遺伝子検査結果
△遺伝子検査結果の判定

 

遺伝子検査の結果は、ワンちゃんが持つ遺伝子の状態を「ノーマル」「キャリア」「アフェクテッド」の3つに分類して示されます。それぞれの状態が意味することを詳しく見ていきましょう。

  • ノーマル:両方の遺伝子が正常で、変異を一切持っていない状態です。この場合、ワンちゃん自身が遺伝疾患を発症するリスクはゼロであり、次世代に疾患リスクを伝えることもありません。
  • キャリア:2本の遺伝子のうち、片方に変異がある状態です。劣性遺伝性疾患の場合、キャリアは症状を発症しませんが、変異を持つ遺伝子を次世代に引き継ぐ可能性があります。
  • アフェクテッド:両方の遺伝子に変異がある状態で、遺伝疾患が発症するリスクが非常に高いです。疾患の種類によっては、ワンちゃんの健康や生活に大きな影響を及ぼします。

必要な遺伝子検査とは?

遺伝子検査は、遺伝疾患ごとにそれぞれの検査が必要です。そして、犬種ごとにかかりやすい疾患も異なるため、犬種特有のリスクに応じた遺伝子検査を行うことが重要です。

たとえば、以下のように犬種によって必要な検査項目が異なります。

トイプードル

  • 進行性網膜萎縮症(PRA)
  • 変性性脊髄症(DM)
  • フォンヴィレブランド病(vWD)

ボーダー・コリー

  • コリー眼異常(CEA)
  • セロイドリポフスチン症(CL)
  • 遺伝性好中球減少症(TNS)

このように、犬種ごとに異なるリスクに対応した検査を実施する必要があります。そのため、「遺伝子検査をしています」とアピールしているブリーダーでも、犬種ごとに適切な検査を行っていない場合があるため注意が必要です。信頼できるブリーダーを選ぶ際には、実施している検査内容について具体的に確認することが大切です。

 

遺伝疾患を発症しないために

予防

遺伝疾患のリスクを回避するためには、親犬の遺伝子状態を正確に把握し、交配計画を慎重に立てることが欠かせません。

発症しないためには、以下3点を守る必要があります。

1. ノーマルの親犬を交配に含める

遺伝子が正常なノーマルの親犬を交配に含めることで、遺伝疾患のリスクを大幅に抑えることができます。この場合、交配相手がキャリアまたはアフェクテッドであっても、以下のような効果があります。

  • キャリアとの交配:子犬は50%の確率でノーマル、50%の確率でキャリアとなり、疾患が発症するリスクはありません。
  • アフェクテッドとの交配:子犬は全てキャリアになりますが、アフェクテッドにはならないため、遺伝疾患の発症リスクはゼロです。

2. キャリアやアフェクテッド同士の交配を避ける

キャリアやアフェクテッド同士の交配は、遺伝疾患のリスクを高めるため避けるべきです。

  • キャリア同士の交配:子犬が25%の確率でアフェクテッドになる可能性があります。
  • キャリア×アフェクテッドの交配:子犬が50%の確率でアフェクテッドとなり、深刻な疾患リスクをもたらします。
  • アフェクテッド同士の交配:子犬が全てアフェクテッドとなるため、絶対に避けるべき交配です。

3.両親とも遺伝子検査の結果の分からない交配はしない

両親犬の遺伝子検査の結果が不明な状態での交配は、前述の2. キャリアやアフェクテッド同士の交配に該当する可能性があるため、避けるべきです。

 

【交配の組み合わせと子犬の遺伝疾患リスク】

交配パターンとリスク
△交配の組み合わせと子犬の遺伝疾患リスク

 

ブリーダーの遺伝子検査パターン

パターン

遺伝子検査は、ワンちゃんの健康を守り、健全な血統を次世代に引き継ぐために欠かせないものです。しかし、ブリーダーによって検査の実施範囲や方法は異なり、それぞれの方法にメリットや注意点があります。以下に、代表的な4つのパターンを詳しく解説します。

1. 母犬(または父犬)のみ遺伝子検査を実施

親犬のうち片方(主に母犬)のみ遺伝子検査を実施するこの方法は、遺伝子検査を行うブリーダーの中で最も一般的です。自犬舎の親犬(母犬など)の遺伝子状態を把握し、キャリアやアフェクテッドでないことを確認することで、子犬の健康リスクを抑えています。

特に、父犬は外部の犬舎から選ぶことが多く、その遺伝子状態が必ずしも確認できない場合があります。それでも、自犬舎の片親がノーマルであれば、交配相手がキャリアやアフェクテッドであったとしても、子犬がアフェクテッドになることはありません(最悪でもキャリア止まり)。

これにより、子犬の遺伝疾患リスクを効果的に抑制することが可能です。

2. 両親犬ともに遺伝子検査を実施

親犬の両方に遺伝子検査を実施するこの方法は、最も安全性が高いといえます。両親犬の状態を完全に把握することで、キャリアすらも世に出さない繁殖計画が実現します。このため、子犬がキャリアになるリスクが排除され、血統全体の健全性を保つことが可能です。

この方法を採用しているブリーダーは、犬種や血統への深い愛情を持ち、次世代の健康を重視しています。また、繁殖における透明性も高く、飼い主に対して安心感を提供することができます。ただし、この方法には手間とコストがかかるため、実施しているブリーダーは少数派といえます。

3. 子犬に遺伝子検査を実施

子犬自身に遺伝子検査を実施する方法は、親犬がノーマルの場合でも、万が一のリスクを排除するために行われます。

特に、飼い主が遺伝疾患に対する不安を抱いている場合、この検査結果が安心材料となります。

4. 遺伝子検査を未実施

親犬や子犬に遺伝子検査を行わない場合もありますが、「遺伝子検査をしないこと=悪」というわけではありません。この背景には、ブリーダーの繁殖方針や犬舎の状況による正当な理由がある場合も多いため、単に未実施というだけで否定的に判断するのは適切ではありません。

例えば、初代の親犬がノーマル同士であり、それ以降の世代も血統が健全に管理されている場合には、遺伝子検査を省略しても遺伝疾患のリスクはほとんどありません。また、長年の経験を持つブリーダーが、自身の犬舎において遺伝疾患が発生していないという実績を根拠に、追加の検査が必要ないと判断している場合もあります。このように、未実施であっても健全な繁殖が行われているケースもあります。

一方で、コスト削減を目的に遺伝子検査を行わないブリーダーも存在します。こうした場合、血統管理が十分に行われていない可能性があり、子犬の健康リスクが高まることも考えられます。そのため、遺伝子検査を未実施としているブリーダーの場合は、なぜ検査を行っていないのか、その理由や背景をしっかり確認することが大切です。

信頼できるブリーダーは、たとえ遺伝子検査を未実施であっても、その理由や背景を明確に説明する責任を果たしてくれます。「検査をしない」こと自体が問題なのではなく、その選択に正当性があるかどうかが、ブリーダーを見極めるポイントとなるのです。

 

まとめ

遺伝疾患はワンちゃんの健康だけでなく、飼い主の生活にも大きな影響を及ぼします。そのリスクを効果的に抑えるためには、親犬の遺伝子状態を正確に把握し、適切な交配計画を立てることが重要です。さらに、信頼できるブリーダーを選ぶ際には、遺伝子検査の実施状況やその背景を確認することで、より健全な血統を持つワンちゃんを迎えることができます。

本記事でご紹介した知識をもとに、遺伝疾患のリスクを正しく理解し、健康で幸せなワンちゃんとの生活を始めましょう。あなたの選択が、未来のワンちゃんの健康と幸福につながります。

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